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この回は、正直あまり見たくないです。見直したくないです…。



 次に目を開いたのは、宇宙の中でだった。
 ゆっくりと覚醒していく意識の中、次に見えたのが銃を構える宇宙用のリーオー。
 銃口は、真っ直ぐこちらを向いている。
 あぁ……と、デスサイズは薄く笑った。もう終わりなのか、と。
 何となく伝わってくるのだが、どうやらこの様子は中継で色々なところに流されているらしい。つまり、色々なところでこれから自分の本体に起きるであろう事柄は放映される。
 デュオは、それを見るのだろうか。だったら、出来れば見て欲しくない。
 どうやら脱出できたらしい彼が見たら、きっととても傷つくだろう。傷つかなくても、悔しさくらいは覚えてくれる気がする。とても良くしてくれたデュオに、そういう事になる光景は見せたくないと思うのだけれど。
 それも、パイロットもいない、右腕は無いまま、そんな自分にはどうしようもないことなのだが。それに、いつもならば本当は自分だけでも動かせなくはないけれども……残念ながらそれも出来そうにない相談だった。
 何せ、精神体…多分、『心』と形容される場所もボロボロだったのだから。
 本体と同じく右はダメだ。痛みは感じないのだが、それは感知しているからでも何でもなく、ただ単に痛みのあまり感覚がなくなってしまったからに過ぎない。
 他にも、体中がズキズキと痛む。どうやら本体を手荒に使ってくれたようだと、OZの面々に文句を言ってやりたい気持ちだったが、それもどうせ成されないことだろう。まぁ、それよりも何よりも一番痛むのは、全然攻撃を食らっていたはずのない胸の辺りだけれど。
 こんな痛み、絶対に仲間には味わって欲しくない。
 人からの憎悪による傷の痛みなん、て。
 それとは違うけれど、『彼』にも無理をさせているなと、デスサイズはリーオーを改めて見やる。中に誰が乗っているかも、漠然と分かる。
 ガンダムパイロットとして、自分を破壊する事に対して彼は何を思っているだろう。
 何も思わなければ、こちらとしてはありがたいけれど、痛みを与えなかったという点で嬉しいと思うけれど、多分…何かを、思わせてしまうのだろう。
 ごめん、と小さく呟いて瞳を閉じ、その時を待つ。
 そうして……衝撃が、来た。
 爆発の衝撃で足が、胴が、肩が、腕が、頬が、全てのパーツが剥がれていくのを感じる。痛みと共にそれらは離れていき、同時に、痛むその場所を炎が舐める。
 思ったより痛くないと、朦朧とする頭で思った。
 痛くないけれども、変わりに感覚が全然無い。今の自分がどんな状況なのかさえも明白には捉えられていないようだし、それは感覚だけではなく視覚や聴覚によってもだった。衝撃のためか痛みのためか過度のストレスのためかは知らないけれど、感覚器官が全部駄目になっているような感じがする。
 精神体が、元からあやふやだったその存在が、少しずつ透けていくような気もした。じっと目を凝らせて見ようと思っても、その目がちゃんとした像を結んで認識を脳に送らないからしょうがない。
 それよりも今は、この感覚に身を委ねていよう。それ以外に出来ることはない。
 どこかへ伸ばした手の先から、少しずつ、闇へととけ込んでいくような感覚に…
 しかし、ふいにその腕を力強く握られたような気がして遠のきかけた意識が戻ってくる。
 そうして、気付いたら下に床の感触。どうやら、一瞬でどこかへ移ってしまったようだ。こう言うときに、本当に精神体は便利だと思う。
 けれども一体どうして…?と首を捻ったが、その疑問は直ぐに解消された。
「無事ではないだろうが……大丈夫なのか、お前」
「その声はウイングだよな…」
 まだぼやけた像しか作らない目でどうにか彼の輪郭を探し当て、恐る恐ると左手でウイングの頬に触れた。触れることが出来た…ということは、彼は間違いなくここにいる。
 成る程、と今の状況を思った。本体の中で自爆をそのまま食らっていた自分を、彼は引きずり出してどこかのコロニーまで運んだのだ、瞬きする間に。精神体としての、その状態ならばどこへでもあっという間に行ける特権を駆使して。
 コロニーだと分かるのは、重力の感じ方による。それに、仮にも『故郷』だ、間違えては失礼だろう。もっとも…もう、そう呼べるとは思えないが。
 そう考えると、また胸が痛む。
「…お前はどーしてここにいるんだ?」
「パイロットに海に沈められた。今はたんなる暇人だからな…町を歩いていたんだが」
「……見たんだ、俺が破壊される映像」
「あぁ。だからこちらに来た」
「『デスサイズ』の精神体を助けに?」
「まぁ…自然とそうなるか。本体をどうのこうのとしろと言われても俺にはどうしようもないからな。出来ることをするだけだ」
「そっか…」
 ありがとう、と言おうとした次の瞬間、突然にウイングの左頬に触れていた手が強く引かれ、元から上手く力を入れることが出来ていなかったデスサイズの体は、直ぐにバランスを崩して引っ張られる腕の力の働くままに倒れ込んだ。
 当然、そうなると着地地点はウイングの腕の中だった。
「ちょっ…お前何やって…っ」
「いや、慰めるにはこうするのが一番だろうと思ったんだが。辛かっただろう?」
 落ち着くだろう、と簡単に言ってくれる仲間に一瞬硬直して、その後一気に脱力した。
 それから、静かに微笑む。
「何かその理由……お前らしくて良いな」
 改めて言おうとした「ありがとう」は、流れてきた涙が邪魔で言えなかった。









主人公側とコロニー側の意見の相違が悲しすぎることになってると思います…。
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