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「そういえば、貴方は彼のことを知っていますか」
「彼?」
「今、寝ているのですが」

 どうなのでしょう、と首を傾げる彼女に、刹那の方が首を傾げたい気持ちだった。何せ、彼女の言う『彼』というのが一体誰なのかが全く持って見当が付かなかったのだ。そんな状況で同意など出来るわけもなく。

 ダブルオーと顔を見合わせていると、それに気付いたのかオーガンダムが案内します、と椅子から腰を上げた。

「実際に見ていただいた方が良いかと思います」
「一番手っ取り早い方法だな」
「えぇ。その方が色々と楽でしょう」
「…とりあえず行く前に容姿くらいは言ってくれないか」

 確かに楽だとは思うが。
 先に何か情報があった方がこちらとしてはありがたいのである。

 刹那の申し出ももっともだと思ったのか、オーガンダムはそうですね、とドアを開きながら考え込む様子を見せた。

「確か、髪は紫です」
「…眼鏡は」
「かけていますが」
「……背は」
「貴方と同じくらいでしょうか」
「………目の色」
「赤です」
「…………多分知り合いだ」
「そうですか。やはりですね」
「…やはり?」

 ただ単に思いついただけなのかと思っていたら、どうやらそれではなかったらしい。何らかの根拠が、彼女の中にはあったようだ。
 それが、刹那には分からない。

「…何なんだ、それは」
「待とう香りが一緒です」
「香り?」
「気配というのが正しいでしょうか」

 言葉を探すようにオーガンダムは視線を彷徨わせ、何か言葉を見つけたらしくこちらに視線を改めて向けてきた。その頃には、三人は廊下に出ていた。

「何というか、同じ場所に属している人、というのは分かるんです」
「分かるのか?」
「ダブルオーも似たようなものだと思いますが」
「……そうなのか?」
「…多分」
「彼女は彼女で別の感じ方でしょうけれど」

 とにかく、分かるのだという。
 それはふと見ればどうでも良い能力である様にも見えるが、実際は使いようによっては実に有用な物なのだろう。

 人形というのは中々に奥が深い。
 他のメンバーにも色々とあるのかもしれないし。

「では、この部屋です」
「…あぁ、もう着いたのか」
「はい。貴方を寝かしていたところと二、三部屋しか離れていませんから」
「そうか」

 その方が、世話もしやすいと判断しての行動だろう。
 納得しながら、刹那はドアノブに手をかけた。

 

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