[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
371
「そういえば、貴方は彼のことを知っていますか」
「彼?」
「今、寝ているのですが」
どうなのでしょう、と首を傾げる彼女に、刹那の方が首を傾げたい気持ちだった。何せ、彼女の言う『彼』というのが一体誰なのかが全く持って見当が付かなかったのだ。そんな状況で同意など出来るわけもなく。
ダブルオーと顔を見合わせていると、それに気付いたのかオーガンダムが案内します、と椅子から腰を上げた。
「実際に見ていただいた方が良いかと思います」
「一番手っ取り早い方法だな」
「えぇ。その方が色々と楽でしょう」
「…とりあえず行く前に容姿くらいは言ってくれないか」
確かに楽だとは思うが。
先に何か情報があった方がこちらとしてはありがたいのである。
刹那の申し出ももっともだと思ったのか、オーガンダムはそうですね、とドアを開きながら考え込む様子を見せた。
「確か、髪は紫です」
「…眼鏡は」
「かけていますが」
「……背は」
「貴方と同じくらいでしょうか」
「………目の色」
「赤です」
「…………多分知り合いだ」
「そうですか。やはりですね」
「…やはり?」
ただ単に思いついただけなのかと思っていたら、どうやらそれではなかったらしい。何らかの根拠が、彼女の中にはあったようだ。
それが、刹那には分からない。
「…何なんだ、それは」
「待とう香りが一緒です」
「香り?」
「気配というのが正しいでしょうか」
言葉を探すようにオーガンダムは視線を彷徨わせ、何か言葉を見つけたらしくこちらに視線を改めて向けてきた。その頃には、三人は廊下に出ていた。
「何というか、同じ場所に属している人、というのは分かるんです」
「分かるのか?」
「ダブルオーも似たようなものだと思いますが」
「……そうなのか?」
「…多分」
「彼女は彼女で別の感じ方でしょうけれど」
とにかく、分かるのだという。
それはふと見ればどうでも良い能力である様にも見えるが、実際は使いようによっては実に有用な物なのだろう。
人形というのは中々に奥が深い。
他のメンバーにも色々とあるのかもしれないし。
「では、この部屋です」
「…あぁ、もう着いたのか」
「はい。貴方を寝かしていたところと二、三部屋しか離れていませんから」
「そうか」
その方が、世話もしやすいと判断しての行動だろう。
納得しながら、刹那はドアノブに手をかけた。