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本気でコレのことを忘れてました。
お題は順番に。私のポリシーですよ。
多分。
まぁ、今回のは同じ日にちなのでギリギリセーフ、ということで。
03.満員電車
どうしてこんな所にいるのかと、一つの箱の中にギュウギュウに詰められた、その人ごみの中で押しつぶされながら考える。いる必要性は全くなくて、むしろいないほうが精神衛生上良いのではないかという、そんなところに。
だいたい、自分はあまり人と触れ合うことを得意としていない。だというのにこうも、反ば強制的に他人と触れ合っているのは、少々不快だった。今すぐあの窓を割って、飛び降りたいという衝動がわき起こるほどには。
それは隣にいる彼も同じなのだろうか。困ったように眉根を寄せていて……ほんの少し、不安そうだった。
まわりにいる人たちの顔色を見ると、彼らはこの状況に何も感じていないことが分かった。若干の不満はあるようだが、それでもこれを日常としてとらえているらしく、それほどでもない。少なくとも、彼らは触れ合う肩、雑多とした空間、息の詰まりそうな密閉感。そういうものに慣れている、あるいは受け入れているらしかった。
まわりを観察しているうちに、ここまでの経緯を思い出した。
そうだ。ふとした時に電車に乗ったことがない、というのをあの酒飲み戦術予報士に知られてしまって、じゃあ行ってこいという話になったのだ。
それだけなら、この人混みの中にいなくても、良かったかもしれない。
二つめの原因は、あの貧乏くじだ。どうせ行くなら、満員の電車に乗ってみればと言い出したのは彼だから。
その時そこに居合わせてしまったことが、隣の彼の最大の不幸だろうか。
話が纏められてしまった後に話が振られて、彼も電車に乗ったことがないというのが判明してしまったのだ。
軌道エレベーター内にあるリニアトレインになら、当然ながら乗ったことはある。ミッションの関係で、宇宙と地上を行ったり来たりというのは日常茶飯事だから。
しかし地上だけを走っている、普通の電車には乗ったことはなかったわけだ。お互いに。
そうして結局、行くのは自分と彼の二人になってしまった。
それは彼にとっては巻き添え以外の何者でもないかもしれないが、自分はかなり安堵した。知らない他人がすぐ傍にいる状態になるというのは、一般常識だったから知っていた。だから知っている誰かが近くにいるというのは、とてもありがたいことの様に思えたのだ。
どうせなら、あのトゲトゲしている眼鏡も連れてくれればよかった。彼ならいっそ、気持ちのいいくらい不快感を盛大に示してくれただろうに。それに、彼にこそこの目を合わせるべきだろう。地上嫌いの彼がさらに地上を嫌いになって、ミッションを拒否するようになったら困るかもしれないけど。けどもそれは、ミッション命の彼に限って起こされるようなことではない。そういうわけで、問題はない。
まあ、彼は今頃ミッションにあたっているだろうから、実際は不可能な話なのだけれど。
ちらり、と時計を見ると、到着予定時間まであと五分を切っていた。もう少しでこの状態から解放される。
それを嬉しく思いながら、一方で残念な気持ちになった。
たしかに、この状況は酷く気に入らない。だが、だからといって、何もかもが悪かったというわけではなかった。たった一つだけだったけれど、良いことはあったのだ。
それがあと五分ほどで終わってしまうことを考えると、ちょっとばかり惜しい気もする。
などと思っている間に、電車は目的地に着いていた。
駅から出て、広いところに出て、そうしてようやく息がつけた。
のびをしていた同行人と一緒に、広場にあったベンチに座る。
ここは、人は多くはあるが、空間が広い。決してさっきのように、窮屈な思いをしなくてもいい。
やはり、こちらのほうがいい。幼い頃、誰もいない広い場所を走り回っていた自分には、こちらの方が性に合っている。
ただ、温もりが離れてしまったことだけが残念だった。
電車の中では否応なしに、体が密着し合う。だから、隣にいた彼とは自然と触れ合っていたわけで、互いの体温が伝わり合うのは当然のことだった。
その時の彼の手の、暖かさがとても心地よかった。また、触れたいと思うほどに。
今でも、頼めば触れることを許してくれるだろうか。
そう思って、口を開いた。
返ってきたのは、肯定。
不慮の事態によって、青のお題ダブル掲載(笑)
今日は刹那の日~?