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布団と言えばこの人でしょう。
45:布団
結局行く当てもなかった自分たちは、近くにある街に足を踏み入れることになった。
何でもここはターンAが働いていたという設定のある宿がある街らしく、しばらくはその店を休業してもらって自分たちの本拠地にしようと言うことになったのである。
まぁ、そういうのはありがたいと思う。
これから、いつまでこちらにいなければならないかが分からない以上、は。
ただ、思うことと言えば。
「…これだけの人数が宿に入んのか?」
「…そここそご都合展開発動だろう」
「まぁそうなんだけどよ…それ言ったら身も蓋もないだろうがよ。それよりはシャアの居城にでもいきゃ良かったんじゃないのか?」
「いや……それは無理、らしいぞ」
「は?」
何で?と疑問の籠もった眼をゼータに向けると、彼は少し後ろの方の…多分一般人を指さして、口を開いた。
「彼らが…魔王の居城は崩れたと、言っていたが」
「…うわぉ」
「だから…無理だな」
「原因不明か?」
「そうではなくて…先日、突然空から振ってきた雷が」
「あ、そういう話?」
人災でなく天災か。
なら仕方ないのだろうと思いつつ、そんな事を考えている間にも宿に辿り着いたので部屋割りを決める事になった。
といってもこれだけの大人数だ、まずは部屋が足りるかどうかを見ることになった。
そしてその、後。
「結果を報告します」
改まった調子でガンダムが言った。
「四人くらいずつ入るとしたら…部屋、一個余りました」
その言葉に。
漂ったのは安堵ではなく警戒心だったのは、もう仕方ないことなのだろうか。
…基本的にこう言うときは、一部屋も余らずぴったりくらいの部屋数であるはずなのだ。それがご都合展開というものであって、それに慣れきってしまっているこちらとしては、そうではないという事実は警戒すべき物なのである。
素直に喜べないのは、何となく悲しいが。
しかし、そこから導き出せる仮の回答を思うと、何とも言えない気持ちになるのは事実だったりする。
「一部屋…ねぇ。誰かまた来んのか?」
「可能性としては…無いこともない、だろうが」
「…また厄介が起こるのかねぇ」
「可能性はあるが……」
「可能性可能性って、そればかりかよ?」
「そうとしか言えないだろう…?」
「…そりゃそうなんだけどな」
答えながら、マークⅡは頬をぽりぽりと掻いた。
ゼータの言うとおりではあるが、ここはそれでも別の何かを口にして欲しいと思ってしまうところなのである。
その辺り、たとえ汲んでいたとしてもゼータは何も変わらず返答するのだろうと内心で息を吐きつつ、余った一部屋部屋についての検証は、そのため息と一緒に外に放り出した。考えても意味は無い。
代わりにガンダムから自分たちの割り当てられた部屋の場所を訊いて、他のメンバーと一緒にそちらに向かう。
といってもまぁ、そのメンバーというのはゼータの血族四人と自分、といういつもと代わり映えしないメンバーなのだが。違うのは女子たちがいないことくらいだろう。
「てか五人かよ。四人くれぇって言ってなかったかい?」
「ま、四人くらいといえば四人くらいだろうけどな…」
「良いじゃねぇか!四人より五人の方が楽しいぜ?」
「代わりに狭くなるけどな……ってオイ、ゼータ」
部屋に入って直ぐにベッドに直行したゼータの、直ぐ側にマークⅡは寄った。
ベッドに俯せになって布団を抱きしめている彼の襟を掴み挙げる。人間状態の時の良いところの一つに、襟を掴める事があるというのを知ったのは昨日で、以来重宝しているのである。これは使いやすい。
そして猫のように掴み挙げられた彼は、少しばかり抗議の色を含んだ目を向けてきた。
「…ボクは眠いんだ。…暑さで上手く眠れなかったからな」
「頭の中にドライアイス常備のヤツに確かにあの暑さはきつかっただろうけどよ…少しは散策に行くとか思え。知らねぇ土地だろ、一応」
「…じゃあマークⅡ…頑張ってくれ……おやすみ……くー」
「…寝やがった」
これはもう起きないかと、マークⅡは襟を掴む手を放した。
いつでもどこでもどんな状況でも、絶対にこのヒトなら熟睡可能だと思う。