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今日もマイスターズは平和です。
そんな感じなお話です。
17.子猫
街を歩けば、当然ながら人でないモノもよってくることがある。
これはその良い例なのだろうか。
ただ。
「…お前、なぁ…」
「だって…寄ってくるんですよ?」
「……仕方ない」
「だからって待機場所まで連れてくんなよ…」
それを、進んで連れてくるのはどうかとも、思うわけであって。
小さな子猫を一匹抱きかかえている刹那と、隣に立っているアレルヤを見て、ロックオンはため息を吐いた。
どうやら二人の話によると、その猫は飼いだし中にふと刹那の足下に寄ってきたのだそうだ。足を動かそうとしても近くにいるまま動こうとしないから、間違って蹴飛ばしても行けないと思っていたところにアレルヤが来たそうで。
とりあえず、離れない猫に対する対策が『刹那が抱きかかえて歩いていく』だったらしいのは、あまり文句は言えないことなのだろう。二人なりに考えて出した結論なのだから。
しかし、それでもどこかで放すとかそういうことは考えなかったのか。いくらなんでも待機場所まで連れてくるのはやり過ぎだろう。ここに連れてきたとしても、いつもここにいるわけでもなく世話が出来るわけでもない、
…とまぁ、それは正論だ。
正論なのだが、いつもは滅多に頼ろうとしてくれない刹那の頼み込むような表情、アレルヤの申し訳なさそうな不安げな表情を見せられると、どうもそれを覆したくなってくる。
さて、どうしたものか。
考えていると、直ぐ側から呆れたような冷たい声が響いた。
「捨ててこい」
「…ティエリア・アーデ、お前には血や涙はないのか」
「ありはするが、このようなことで使うほど無駄なモノではないからな。それよりその猫だ。世話が出来るわけでもないのに、一体どうするつもりなんだ?」
「……それは」
「それ見たことか」
口ごもるアレルヤの様子に、我が意を得たりとばかりにティエリアは腕を組む。
「良いか?そういう無責任さが野良の猫や犬を生みだし、挙げ句の果てには野良のワニまで生み出すんだ」
「…や、ワニは言い過ぎじゃないか…?」
「それが動物たちにとって良いことか?否!そうではないだろう!」
ロックオンのツッコミをスルーして、ティエリアは力強く叫んだ。
そして唖然としている刹那とアレルヤの前で、彼のふるう熱弁は止まる様子はない。
「良いか?期限は三日以内だ。その間にポスターやら何やらを作り、配布、猫の存在を近隣住民に知らせろ。飼い主候補を探すんだ」
「…ティエリア・アーデ……!」
「拾ってしまったからには最後まで責任を持つ。…それがガンダムマイスターだ!」
……何か違うような気がするのは自分だけなのか。
思わず遠い世界に意識が飛びかけたロックオンは思い、その考えが正しかったことを知った。刹那やアレルヤは既に洗脳済みの様子で、ティエリアを褒め称えんばかりの表情を浮かべていたのである。
刹那は多感なお年頃なのでまだしも、アレルヤまでもが。ハレルヤは止めなかったのだろうか。彼がいるからアレルヤはまだ大丈夫だと思っていたのに。というか大丈夫であって欲しかった。一人は流石に…辛い。
そんなロックオンを無視して、彼らの話はどんどんと続く。
「ティエリア・アーデ!お前こそ真のガンダムだ!」
「凄いよティエリア!そんな事まで考えていたなんて…」
「当然だ。この位、考えるのは至極当然の事」
ふ、と笑うティエリアを認めて、ロックオンはすっと部屋から出るべく足を動かし始めた。ダメだ。このノリはついて行けなくはないが少し問題がある。
だがしかし、そう簡単に放してくれるわけもなく。
いち早くこちらに気付いたらしいアレルヤが、不思議そうな表情でこっちを見ていた。
「ロックオン、どこか行くんですか?」
「……いや、あのな…」
「…!刹那・F・セイエイ!ロックオン・ストラトスを捕獲しろ!」
「了解!刹那・F・セイエイ……目標を駆逐する!」
「駆逐じゃねーだろっ!?」
突撃してくる刹那を見据えながらもツッコミはしっかりと行って。
その後、ロックオンの意識は軽く闇の中に沈んだ。
…起きたら、まずは刹那に手加減の大切さを、アレルヤに見て見ぬふりの重要さを、しっかりと教えようと思いながら。ティエリアに関しては、いっそ放任主義を取るべきだろうかと、思った。
苦労人ロックオン。しかしあのメンバーではツッコミは基本的に彼だろう。
そして緑お題なのにマイスターズ。ついにここにもそういう波。