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たまにはそういう話もあるさ、という話。
14.曖昧な答え
…おかしい。
クリスティナは、最近のトレミークルーの自分に対する反応の様子に訝しさを覚えていた。これがリヒテンダールだとかアレルヤだとか、あぁいう分かりやすいというか…隠し事が不得手な人物だけなら、何を隠しているのかだってわりと簡単に推測できることだってしばしばあるのだが。
しかし、今回は少し違った。
嘘を吐くのが苦手ではないスメラギや、フェルトや…刹那、ティエリアまでもが同じような態度を見せるのである。
その上、誰も彼もが自分の事をブリッジに近づけまいとする。
あのラッセですら…だ。
この状態で、果たして紛争介入をしようということになったらどうするのだろうと、自分ですら疑問に思ってしまうほどに。実際にそれがあって欲しいわけではなく、純粋に疑問として思ったワケなのだけれど。
そして、こう思ってしまう時点で。
これは不思議なんて話ではなく、既に。
異常。
その一言に尽きる状態だ。
…だから。
「ちょっとリヒティ、時間良い?」
「え…あの、えっとっすね…」
「良いわね?」
「…はい」
一番詰め寄りやすいリヒテンダールを捕まえて尋問することにした。
どこか焦っている様子で決して視線をこちらと合わせまいとする彼に、ニコリと微笑みながらクリスティナは問いかけた。
「…ねぇ、最近みんな、私に何か隠してない?」
「め…滅相もないっすよ。何でそんなことしないと…」
「してるわよね?」
「…や…その」
「してるんでしょう?」
「……そのえっと…」
「ハッキリした方が良いわよ?その方が早く楽になれるじゃない」
「…えぇと…」
いつまでも曖昧な…というか意味を成さない言葉だけを紡ぐリヒテンダールに業を煮やしつつ、しかしクリスティナは待った。あまり威嚇するとはなせることもはなせなくなる可能性があり、それはあまり好ましくない。
だから待った。
待ちながら無言で、当然のように圧力はかけていたが。
そうしてしばらくして。
「…っとっすね…」
観念したように、リヒテンダールは口を開いた。どうやら、話をするつもりになったらしい。ようやく諦めたかという、こちらはそんな気持ちなのだけど。
一体何を言うのやらと圧力は少し抑えて、黙って彼の言葉を待っていると。
「…っすみません!」
「…は?」
突然謝られた。
どういうことかと彼の表情を見やると、それはもうとんでもなく情けない表情をしていたので、逆に何も言えなくなって口を閉ざす。
そんな自分を見て何を思ったかは知らないが、彼は、続けて言った。
「俺たち、悪気があったわけじゃなくってその…なんていうか…つまり、事故で……クリスティナが最近やってたプログラミングデータ、全消去しちゃったんだよ!」
「全消去って…」
「うっかり消したティエリアは石みたいに固まって…その場にいた全員で、とりあえずティエリアが立ち直るまで黙っておこうって決めたっす」
「あぁ…だから最近妙に優しかったんだ、ティエリア」
成る程と言うしかなかった。
苦笑を浮かべ、クリスティナはポンとリヒテンダールの肩を叩いた。
「大丈夫よ。あれ、バックアップはあるから」
「…本当っすか!?」
「本当よ。こんな事で嘘なんて言うわけ無いじゃない」
実際、バックアップデータがあるのは本当だ。大切なデータ、まさか保存して放置しっぱなしであるわけがないではないか。
だから大丈夫だと言ってやると、彼はとても安心した表情を浮かべた。
…後で、ティエリアにも言いに行こう。一番気にしてるのは彼だろうから。
クリスとリヒティの話ももっと色々書きたいなぁとか思ってたりして。