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出会いシリーズ最終章です。
その話は、とても唐突な事だった。
「今、何てった?」
「だから、我は政宗の封印を解こうと思う、と言ったのだ」
「本気で、か?」
「む。我の言葉が信じられぬと申すか」
どこか憮然とした様子で言う元就に、政宗は思わず思考を停止した。
おかしい。何かおかしい。確か、自分はこの場所に封じられた竜のハズで、封じたのは毛利の血筋の者であり、付け加えて毛利家というのは妖を祓う家系だ。
それが、一体どこをどう巡ったらそういう話になるというのだろうか。
もうワケが分からないと頭を抱えている間にも、元就は言葉を続ける。
「我は何度も考えてみた。そなたをこの場に封じておくのは正しいのか否か」
「正しいんじゃねぇのか?」
「人間からすればな。だが、それではあまりに理不尽だ。あまりに人間の都合だけを優先しすぎているように思う」
その言葉に、あぁ、と思い出す。
そうだ。そういえば、元就は人間よりも妖を好いている。
「だから、政宗は自由になっても良いと我は考えたのだ」
「封印が解けたら、今までの腹いせで街を壊すくらいするかもしれねぇぜ?」
「せぬであろう、そなたは」
さら、と何でもないように元就は言い、そのせいで政宗は次の言葉を封じられた。それから思う。その言い方は、少しばかり、ずるい。闇雲な信用ではなく、長年の付き合いから生まれた信頼の元にそのようなことを言われたら、反論なんてそうそう出来ない。
しかも質が悪いのが、元就はそれを事前に想定済みだと言うことだ。
現に彼はニヤリと笑ってこちらを見ている。手のひらの上。そんな言葉が頭をよぎる。
「政宗、これは決定事項だと思え。我はやると決めた。だから実行する。それだけの事ぞ」
「…だろーな」
こうなったら止まること求められることもないだろう。
はぁ、と息を吐いて、政宗は頭を掻いた。
「けどなぁ…解くって簡単に言ってくれるが、そう簡単にできる事でもねぇぜ?少なくとも俺を封じたアイツ以上の力を持たねぇと」
「では訊くが、我とそやつの力量はどの程度違う?」
「天と地、ってまではいかねぇな。そうだな、天と空ほどの差ってとこか」
「…?」
政宗の言葉に、元就は首を傾げた。
「天と空は一緒ではないのか?」
「違ぇよ。結構歴然と差はあるぜ」
「ふむ…政宗が言うのならばそうなのであろう」
竜は空に住まう者だからな。
そう続ける元就に、政宗は笑って返した。その笑みが曖昧な物にならなかったかどうか少々自信はなかったのだが、気にされないところを見ると、どうやら普通の笑みとして映ったらしい。
そのことに、若干の安堵を覚える。
元就に教えるには、まだ早い。
政宗は、空に住んだことはないのだという事実は。
「時に政宗、そなたは封印の解き方は知っておるのか?」
「知らねぇよ。けどまぁ、まずしねぇとって事は分かる」
「護符、か」
「だろ。あれは代々の毛利家当主のヤツらが当主になった日に一枚ずつ貼ってきた、いわゆる封印の補強ってやつだからな」
昔は護符など貼っていなかったのだ。実際その様な物はいらなかったし、今でも実は必要ないだろう。それ程までに『彼』の力は偉大なのだ。死して、尚。付け加えて、『彼』の作り上げた結界の循環構造は未だに綻びることもない。
これ以上、何をする必要は本当になかった。
それでも未知の物に対する恐怖故に強化され続けた結界。それはもう、誰にも手を出せる領域ではない。けれども、その護符を剥がしていけば、ある程度は対抗策を見つけることも出来る、かもしれない。あくまで可能性がある、というだけなのだが……あるだけましだというものだろう。
せめてもの救いは、元就が護符を貼らなかったことか。
だが、護符を剥がすだけでも大変な作業になるはずだ。
「…それでもやんのか、元就」
「何度も言わせるでない、政宗」
「良い心がけだとくらいは言ってやるぜ。可能か不可能かはおいといてな」
「ふ、我を誰だと思うておるのだ。毛利家当主、毛利元就ぞ」
「良い返事じゃねぇか」
に、と笑って政宗は元就を見た。
同時に、彼もこちらを見た。
交錯する視線。
「本気だってんなら、俺も何とかする手伝いはしてぇが」
「余計な気遣いぞ。我は、我一人でもやり遂げてみせる」
「楽しみにしてるぜ」
「必ずやりとげようぞ」
元就は、そう、約束した。
そんな感じの二人なのです。
「今、何てった?」
「だから、我は政宗の封印を解こうと思う、と言ったのだ」
「本気で、か?」
「む。我の言葉が信じられぬと申すか」
どこか憮然とした様子で言う元就に、政宗は思わず思考を停止した。
おかしい。何かおかしい。確か、自分はこの場所に封じられた竜のハズで、封じたのは毛利の血筋の者であり、付け加えて毛利家というのは妖を祓う家系だ。
それが、一体どこをどう巡ったらそういう話になるというのだろうか。
もうワケが分からないと頭を抱えている間にも、元就は言葉を続ける。
「我は何度も考えてみた。そなたをこの場に封じておくのは正しいのか否か」
「正しいんじゃねぇのか?」
「人間からすればな。だが、それではあまりに理不尽だ。あまりに人間の都合だけを優先しすぎているように思う」
その言葉に、あぁ、と思い出す。
そうだ。そういえば、元就は人間よりも妖を好いている。
「だから、政宗は自由になっても良いと我は考えたのだ」
「封印が解けたら、今までの腹いせで街を壊すくらいするかもしれねぇぜ?」
「せぬであろう、そなたは」
さら、と何でもないように元就は言い、そのせいで政宗は次の言葉を封じられた。それから思う。その言い方は、少しばかり、ずるい。闇雲な信用ではなく、長年の付き合いから生まれた信頼の元にそのようなことを言われたら、反論なんてそうそう出来ない。
しかも質が悪いのが、元就はそれを事前に想定済みだと言うことだ。
現に彼はニヤリと笑ってこちらを見ている。手のひらの上。そんな言葉が頭をよぎる。
「政宗、これは決定事項だと思え。我はやると決めた。だから実行する。それだけの事ぞ」
「…だろーな」
こうなったら止まること求められることもないだろう。
はぁ、と息を吐いて、政宗は頭を掻いた。
「けどなぁ…解くって簡単に言ってくれるが、そう簡単にできる事でもねぇぜ?少なくとも俺を封じたアイツ以上の力を持たねぇと」
「では訊くが、我とそやつの力量はどの程度違う?」
「天と地、ってまではいかねぇな。そうだな、天と空ほどの差ってとこか」
「…?」
政宗の言葉に、元就は首を傾げた。
「天と空は一緒ではないのか?」
「違ぇよ。結構歴然と差はあるぜ」
「ふむ…政宗が言うのならばそうなのであろう」
竜は空に住まう者だからな。
そう続ける元就に、政宗は笑って返した。その笑みが曖昧な物にならなかったかどうか少々自信はなかったのだが、気にされないところを見ると、どうやら普通の笑みとして映ったらしい。
そのことに、若干の安堵を覚える。
元就に教えるには、まだ早い。
政宗は、空に住んだことはないのだという事実は。
「時に政宗、そなたは封印の解き方は知っておるのか?」
「知らねぇよ。けどまぁ、まずしねぇとって事は分かる」
「護符、か」
「だろ。あれは代々の毛利家当主のヤツらが当主になった日に一枚ずつ貼ってきた、いわゆる封印の補強ってやつだからな」
昔は護符など貼っていなかったのだ。実際その様な物はいらなかったし、今でも実は必要ないだろう。それ程までに『彼』の力は偉大なのだ。死して、尚。付け加えて、『彼』の作り上げた結界の循環構造は未だに綻びることもない。
これ以上、何をする必要は本当になかった。
それでも未知の物に対する恐怖故に強化され続けた結界。それはもう、誰にも手を出せる領域ではない。けれども、その護符を剥がしていけば、ある程度は対抗策を見つけることも出来る、かもしれない。あくまで可能性がある、というだけなのだが……あるだけましだというものだろう。
せめてもの救いは、元就が護符を貼らなかったことか。
だが、護符を剥がすだけでも大変な作業になるはずだ。
「…それでもやんのか、元就」
「何度も言わせるでない、政宗」
「良い心がけだとくらいは言ってやるぜ。可能か不可能かはおいといてな」
「ふ、我を誰だと思うておるのだ。毛利家当主、毛利元就ぞ」
「良い返事じゃねぇか」
に、と笑って政宗は元就を見た。
同時に、彼もこちらを見た。
交錯する視線。
「本気だってんなら、俺も何とかする手伝いはしてぇが」
「余計な気遣いぞ。我は、我一人でもやり遂げてみせる」
「楽しみにしてるぜ」
「必ずやりとげようぞ」
元就は、そう、約束した。
そんな感じの二人なのです。
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