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弟妹同盟の、ちょっと結成話を…と。
予定としてside:雲雀→クローム→スクアーロ、的な感じです。
出会ったのは、偶然だった。
しかもよっぽどにタチの悪い偶然。
「何で君がここにいるの?」
「任務だぁ。そういうお前は何でここにいんだよ。授業はどうしやがった?」
「あんな面倒な物受けていられるわけがないじゃない」
「……学校好きとか言っといてそれはねぇと思うんだがなぁ」
「文句有るの?」
す、とトンファーを構えながら、雲雀はゆっくりと目の前にいる相手を見た。
この、並盛中の屋上に雲雀が来たのは、本当に気まぐれ故の行動なのだ。ただ単に、昼寝がしたくなったという、それだけの動機しかない行動。応接間に行っても良かったのに、屋上を選んだという選択。
ほんの少しの気持ちの揺れで、あっという間に変わるような事柄。
けれど、そうやって足を運んだ場所にこんな相手がいるとは思わなかった。
つい先日にこの愛すべき学校を破壊していったヤツらの一人が、この場所に降りたってなおも平気な顔をして立っている、とは。
想定外の、タチの悪い……同時に、幸運な偶然だった。
雲雀は、暴れ足りていない。結局あの王子との戦いは決着が付かずじまいだったし、彼らのボスのことも咬み殺してあげられなかったし。出来たのは精々、あの弱い弱い雑魚たちを叩きのめすことくらいだったのだから、当然と言えるだろう。
そう言う点から見ると、相手は本当に丁度良い相手だ。次席、とかいう地位にいるということはそこそこに強いに違いない。
しかし、彼は渋い顔をしたまま構えようともしなかった。
こちらが武器を構えたというのに戦闘態勢にも入らない相手に、いっそ訝しさを覚える。
「…ねぇ、何で武器を構えないの」
「相手をしてやるのも悪くねぇがなぁ、今回はちょっとした任務があるんでな」
「任務?」
そういえば、先ほどもその様なことを言っていたか。
何気に仕事はしているのだなと思い、だがその様な事情が全く関係ない雲雀は気にせずに攻撃しようと身をかがめ、床を蹴って、一瞬で距離を詰めて。
攻撃を繰り出し、トンファーが顔に当たる、というところで寸止めした。
……本当に、対応もしてこない。
「…舐めてるの、君」
「さぁ、どうだろうなぁ?」
「舐めてるんだね。分かった。そうなら…僕は加減はしないよ」
「だぁぁ!舐めてねぇ!舐めてねぇから!仕方ねぇだろ不可抗力なんだからよ!」
「………不可抗力?」
何だそれはと視線をやると、彼はどこか不機嫌そうに左腕を持ち上げた。
そうして気付く。袖の中に、あるはずの質量がない。
「どうしたの、それ」
「留守、ってことだろ。しばらくこれで生活しろとよ。んで、ついでに剣も取られちまったんだぁ。そもそもこれじゃあ括り付けも出来ねぇし……分かったか?」
「分かんない。素手で対応すればいいじゃないか」
「馬鹿言え。んなことしたらこっちも本気で対応しねぇとなんねぇだろぉが」
「それで良いじゃない、別に」
「疲れるだろ」
「…」
咬み殺すんじゃなくて、抹殺しようかコイツ。
本気で思った。間違いなく本気で。
途端に殺気を身に纏ったこちらに気付いたのか、勘違いすんな、と彼は言った。
「本気で疲れてんだよ……現在進行形で。休み返上中だからなぁ」
「どうして?」
「忙しいんだよ、こっちはなぁ」
そのせいで義手もダメになったと、ブツブツ呟く彼に、あぁあれは義手だったのかと、今更ながらに雲雀は知った。興味がなかったから全然覚えていなかった。
にしても、そんな、義手がダメになったという人間を使うほどにあの集団は人手が足りないというのだろうか……今。それなら、何となく疲れを溜めまいとしているのも分かる、気もする。任務中に倒れたら嫌なのだろう。自分だって、制裁中に倒れることがあったら嫌だ。そう思えば納得できた。だって、それではイライラが募ってしまう。
「ということは、君の仲間もそんな感じなの?」
「あ゛ー、どうだろうなぁ…ベル辺りがさぼってそうだぜぇ」
言いながらも、彼は苦笑を浮かべて。その苦笑が何だか優しい物であるような気がして、彼でもそんな表情が出来るのかと思って、少しばかり、自分は。
そして、そんな発想が出てきたことに、驚く。
驚きながら…結局。
「まぁ、大変だねとくらいは言ってあげようか」
「随分と譲歩したなぁ、お前」
「お前じゃなくて僕は雲雀恭弥だよ。えっと…」
「スペルビ・スクアーロ。スクアーロで良い」
「あぁ、分かったよスクアーロ」
その感情はそのまま、受け入れることにした。
そんなファーストコンタクト。