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最初も最初な感じで書いた話だから何かが違うかも知れない。ごめんなさい…。
01:空にかかる橋
不思議な状況もあった物だ。
政宗は、隣にいる人物に視線を向けないままに思った。まさかこんな場所で会って、こんな所で一緒にいることになるとは。
事の始まりは、あまりに政務が多すぎたことだろうか。いつまで経っても何日かかっても無くならない紙の束に、嫌気がさしてコッソリと小十郎の目を盗んで、六爪の内の一本を持って城から出て行ったのが今日の昼間。
流石に城下をうろついていたら気付かれるだろうかと、街ではなく、街の外れの小道へと向かった。散歩が出来るだけでも、現状では万々歳なのである。
そうして、何故か。
バッタリと、出会ったのが直ぐ横の。
どうやら相手も今回のことは想定外だったらしく、自分と鉢合わせたときの表情は思い返してみると何となく笑える物だった。もっとも、自分だって人のことは言えないような表情をしていたのだろうとは思うのだが。
それからしばらくは互いに用事が特にあったわけでもないと知って、肩を並べて歩きながら差し障りのない会話を続け、結果として、夕立にぶつかってしまったと言うのが現状までのあらましである。丁度、傍に休憩所があったことは不幸中の幸いだったのだろう。
その休憩所の中から外の様子を眺めるのは、偶然に出会った一人。
彼は勢いの衰えない雨を見て、どこか感心したように言った。
「雨、止まないねぇ」
「夕立だからとっとと止むと思うけどな」
「あぁ、それもそっか」
「何だ?早く帰る理由でもあんのかよ?」
「いやねぇ…いつまでも帰らないと旦那が、ねぇ?」
別に心配されてるワケじゃないよ?任務とかじゃなくて単なる散歩だし。
どうやら散歩というだけで甲斐から奥州に来ることがあるらしい忍はそう言って、だけどねぇ、とどこか諦めたように呟いた。
「旦那、放ってたらシャレにならないことしてくれちゃうからねぇ…」
「そりゃ納得だな、保護者殿」
「…保護者って言わないでくれる?」
「事実じゃねぇか」
「うーん、そう言われると何とも言えないんだけどね…少し複雑だよ」
「Ah?どの辺りがだ?」
「その言葉に納得を自分で覚えちゃってる辺り」
「…Ha、そりゃ」
自覚症状があって良いことではないか。
思わずクツクツと笑うと、思っていたことを感づかれたのか、じとりとした視線がこちらに向けられた。
「ちょっと独眼竜の旦那?笑い事じゃ無いって分かってる?」
「アンタにとっちゃな。生憎と俺は部外者なんでね、笑い事にさせてもらう」
「酷くない?」
責めるように言う佐助も、どうせ本気でそうは思っていないだろう。でなければ今、笑いを堪えるような表情を浮かべているはずがない。
何だかんだで結局の所、佐助も受け入れてしまっているのだ。
まぁ、同情が無いわけでもないのだが。『あの』真田幸村の保護者など、この忍びの他に勤まるとも思えない。探せばいるのかもしれないが、きっとそれは非常に数少ない人数しか存在しないだろう。
したがって、猿飛佐助という男はとてつもなく貴重な存在なのだ。
「ま、精精頑張りな」
「あーあ、竜の旦那ってばそうやって人ごとなんだから」
「人ごとだろ実際」
「…そうやって言われると答えようがないねぇ、全く」
「だろうな」
「あーもう、ここは嘘でも『人ごとじゃない』って言う所じゃないの?」
「知らねぇよ。それにそうだとしても、人ごとだから仕方ねぇじゃねぇか」
「ん、まぁそうだけどさ……あ」
言葉を切って空を見上げた佐助にならって同様にして、あぁ、と呟く。
「止んだな、雨」
「しかも虹まで掛かってるし。至れり尽くせり?」
「だったら始めっから雨で足止めなんざ食わねぇよ」
「だよねぇ…じゃ、俺様もう行くから」
「おう。じゃあな」
遠ざかる背を僅かばかり見送って、くるりと政宗は足を城へと向けた。
そろそろ帰って政務の続きをやるとしようか。国が傾いてしまっても困る。まぁ、あと数日くらいはさぼってもそのようなことはないだろうが。
もっと精進しなければ…とか思いながら。
佐助ってちょっと難しいなと思ったりしました。