遊園地に行こう・中

ご愁傷様というほか無…頑張って。

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　半ば強制的に連れてこられた遊園地にて。
　スクアーロはザンザスと並んでベンチに腰掛けていた。
　多分……なのだが、普通の一般人たちが今の自分を見たら『とにかく疲れて気が滅入っている二人組』だと認識するだろう。子供どもがいないので、もしかしたら場違いなどと思われるかも知れない。そこは気に入らないが、まぁ、仕方ないとして。
　だが、それも事実の一面ではあるが全てではない。
　正確には『場違いな場所に連れてこられて精神的に疲労してぐったりとしている』の続きに『内心では帰った後にあの二人組に一体どんな仕返しをしてやろうかと苛立ちを抑えている』がつく二人組なのである。……本当に、帰ったら覚悟していると良い。
　その前に生きて返すかどうかも謎だが。
　少なくとも……遊園地内にいる間は、安全であると言うことくらいあの二人も承知しているだろう。自分たちも、手を出せないことくらい理解している。この遊戯はあのボンゴレ十代目が噛んでいるのだから。
　あの子供にも少しは加減して欲しい物だと嘆いていると、ふいに、隣から地の底からはい上がってくるような声が響いた。
「…あのガキども…帰ったら殺す」
「…あ゛ー」
　あのガキども、ときたか。
　恐らくその『ガキ』の中には綱吉も入っているのだろうと推測されたが、流石にそれはまずいだろうとスクアーロは少し遠くを見た。何というか、どうして指輪争奪戦のあの時、自分は山本に負けたんだろう。あそこで勝っていたら仕事の苦労はあったとしても、こういう別種の苦労はなかったと思う。
　そんな感じで気持ちが分かり切るほど分かってしまったので、少しばかり反論がしにくくなってしまった。
　しばらく視線を中に泳がせ、それからようやく口を開く。
「気持ちは分かるけどな、遊園地内で言うのは止めとけぇ…」
　もっとも、出たのはありふれた言葉でしかなかったのだが。
　しかし、どうせどこかに監視がいるだろう現状では、だいぶ正しい言葉だったのだが。
　それに対してザンザスは無言だった。
　なのだ、が。
「……」
「憤怒の炎を出すのも止めとけよなぁ」
「…ち」
「ちとか言うんじゃねぇよ」
　まるで聞き分けのない子供だった。
　子供は子供でも、遊園地には相容れない子供だが。
　…こんな殺気及び敵意及び怒り及び苛立ちをまき散らしているような男がいて、辺り一面に広がっている子供たちは何の支障もないのかと見渡してみれば、誰も彼もが笑って次に行くのであろうアトラクションの方へと駆けていた。むしろ親の方がびくびくとしているようだった。子供は恐ろしい気配よりも、今を楽しむ方が忙しいようだ。
　羨ましいことだと、それら全てを一番間近で受けることになっている自分としては、そう思わざるを得ない。いつもそれでは戦闘の時に困るが、今この瞬間くらいは殺気などに鈍感になりたいと本気で思う。
　いつもは思わないことだったが、それを思わせるくらいに現状は深刻だった。
「いや…つーかその前にこんだけ強い殺気だったらマジで感覚が麻痺するんじゃ…」
「麻痺しろ。それで大けがでもしてこい」
「…苛立ってんのは分かるけどなぁ…八つ当たりは止めろよ」
「口ごたえか？」
「…う」
　獰猛な笑みを見ることになって、スクアーロは冷や汗を流した。
　このまま行くと、帰ったらあの二人以上に自分がとんでもないことになる。もちろん主犯の綱吉以上に、だ。綱吉の場合はボンゴレ十代目という障壁があるから、そもそも大事には至らないだろうとは思うのだが。
　だが生憎と、自分にはそんな物はない。
　万事休す。
　そんな時、だった。
「あっれー？ボスに鮫、何大変なことになってんの？」
「ベル…多分それ、僕らが言って良いセリフじゃない」
「そうなの？あ、そうだこれあげる、はい」
　売店から帰ってきたベルフェゴールにソフトクリームを渡され、受け取りながら何ともいえない気持ちになる。
　強制的に連れてきた後、一緒にアトラクションに行けと言い出さなかった二人は中々に懸命だった。そんなことを言った瞬間、おそらくこの施設は跡形もなく燃え尽きていたことだろう。死傷者なんて誰が考えるわけでもないだろうし。
　初めから連れてくるな、と言ってやりたかったが。
　それはもう、言っても遅いことだろうとスクアーロはため息を吐いた。

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苦労鮫よ、頑張って。貴方の方になんかいろいろ乗かってるんです。