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本格的に裏ボス編へ・序。
56:闇
「近隣の山に魔物が出るという話を聞きました」
「魔物!?オカルトか!?」
「や、それは違うと思う」
魔物と言ったらオカルトというかファンタジーじゃないだろうか。現実じゃないという点だけは一緒だと思うけれど、両者の間には何かとてつもない隔たりがあるような気がするのは自分だけだろうか。
少なくとも魔物には会ったこと無いなぁと思いつつ、ウサギの形にむいたリンゴをシャリシャリと咀嚼しつつ、デスサイズは『クリア条件』とやらをそれぞれ調べてきた二人の話を聞いていた。ウイングには下の階に水を汲ませに行かせているところで、いない。
いなくて良かったと思うのは多分、このメンバーの中では自分だけだろう。何というか自分には彼が、そんな話を聞いたら即行で出て行ってしまいかねない気がしていたから。だいぶ暇そうだから魔物とやらを潰しに一人でも行きかねない。どんな相手で、どれ程強いかさえも知らないままに、だ。
そんな見ていて怖い事をさせるわけにはいかないのである。
どうせなら四人か五人くらいで組んで行けというのが自分の意見なので。
「しかし…魔物、ねぇ」
「魔物ですか…そのヒトがラスボスさんなんですか?」
「ヒトでは無いと思いますが、多分隠しボスだと思われます」
「魔王は倒されているからな」
「隠しボス、ってことはやっぱ強いのか…」
しみじみと言葉にすると、アレックスがうんうんと頷いて口を開いた。
「でしょうねぇ。きっとシャアさんの何千倍も強いんですよ」
「…それは無いんじゃ」
「ですよね」
思わず呟くと、スターゲイザーも同意してくれた。
だって…それはそうだろう。誰だって同じように思うはずだ。ラスボスの何千倍も強い相手をどうやって勇者パーティが倒せるというのか、ということなのだから。
レベルを一番上まで上げても絶対に勝てないだろう、それ。
反則キャラがいたらどうにか倒せるかも知れないが、その反則キャラの一人はこうやって熱で倒れている。もう一人は大会の方に行っているし、後の一人も大会の見学に行っている。つまり、この場には様子を見てきてもらえる人がいない。
危険だろうと二人に行ってもらうべきだろうか。それともウイングを…と、思って首を振る。それだけは絶対にダメだ。いつもの自爆のノリで色々やらかしそうで怖い。
「しかし、ソイツを倒したら本当に戻れるのか?」
「それはまた根本的な質問ですね…分かりません、とだけ言っておきます」
ノワールの言葉に、スターゲイザーはゆるりと首を振った。
「圧倒的に情報不足ですし、そもそもこの場所が一体何なのかさえも分かりませ…」
「それは…私が説明しよう」
と。
ズリズリと音を立てながら現れたのは魔導師。というかギャンだった。
「ギャンさん!?大丈夫ですか!?縄がまだほどけてないのに…!」
「ほどけるのを待つわけにもいかないだろう…というかほどけないだろう、これは。ガンダムの怨念の籠もった縄だぞ?」
「…籠もってますか?」
「んー、結構そういう感じ?」
スターゲイザーの問いに答え、デスサイズはアレックスと一緒にギャンを縛り上げている縄をほどきに掛かった。流石にこのまま話してもらうのは良心がどうのこうの、である。
「で、説明って?」
「この世界に関してだ」
手を動かしながら訊けば、するりと返答があった。
「ここはまぁ、私が独自に開発したとある電波によってそれぞれの意識を電子空間に飛ばした先だな。つまり、ここはゲームの世界という電子世界だ」
「本当にゲームの世界だったんですね」
「その通り。そしてクリア条件は…うろ覚えだが、確かデビルガンダムを倒せば良かったはずだが」
「…あー、成る程」
確かにそれは魔物だ。
納得して、デスサイズはちゃっと手元にあった果物ナイフを構え、そして。
投げた。
「…危ないな」
「危ないついでにもっと危ないコトしてやろーか?」
それはもうデビルガンダムを倒しに行こうとか思えなくなるくらい。
表情から最初から話を聞いていたのだろうと推測できるウイングは、右の人差し指と中指で挟むように受け止めた果物ナイフを普通に持ち直し、フッと笑った。
「出来るならやってみると良い。とにかくオレは行くと決めた。暇だからな」
それは、予測した中でとてつもなく嫌な方向のパターンだった。
つまり、ギャンが開発した電波というのが、例の部活動の時の色んな電波のブレンド品と同様という話。