式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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事件後の、翌日の話。
「…は?それってマジ?」
「本当だ。嘘を言ってどうする」
「いやだってよ…」
ありがたい話ではあるが、ここまで突然では流石に自分でも驚かざるを得ない。
唐突に停学が解かれてしまえば、それはもう驚く他に取るべきリアクションというものがない。あるのなら、是非とも教えて欲しいものだ。
…ともかく。
そういうわけだったので、ミハエルは少しばかりヨハンの言葉を信じることが出来なかったのである。まさか、あの教員たちが手のひらを返して仲良くしようなんて、言い出すわけがないのだから。
どういうことだと首を傾げていると、後ろからひょいと顔を出したネーナがとてつもなく上機嫌で口を開いた。
「あのねー、何か来週からいなくなるんだって話なの」
「はぁ?たった五日間だけだぁ?」
「そうそ。ていうか今から帰る準備してるっていう話。だから停学退学諸々のことは無効ってことになりました、っと」
「今、ヴェーダの仕事部屋で手続きをしているところだろう」
「マジですか」
「マジもマジ、大マジよ、ミハ兄」
笑顔で妹はそう言い、ならば本当に本当なのだろうとミハエルは信じることにした。ここまで楽しげな彼女の様子に、理由付けというならばそれ以外には考えられない。
事実なのか。
今更ながらにそれを実感する。
「…ミハエル、顔がにやけているぞ」
「そりゃ仕方ねーよ、兄貴。アイツらがいなくなるんだぜ?すっげーハッピーな気持ちなんだから笑ったって良いじゃねぇか」
「他人の不幸を笑うなんて、ミハ兄ってば外道ー!」
などとネーナは実に酷いことを言ってくれるが、とても良い笑顔をしているので良しとしよう。そもそも彼女だって同じようなことを思っているに違いないのであって、これは単なるじゃれ合いなのだし。
しかし、少し考えてみると疑問が一つ。
「なぁ、兄貴。何でアイツらこんな早く逃げるんだよ」
「そーいえばそれ、私も知らない。ヨハン兄は知ってる?」
「残念だが私も知らない」
ヨハンはそう言って首を振り、しかし、と続けた。
「教師が何かをしたという話は聞かないからな、恐らく生徒の中の誰かが何らかの行動を起こしたのだろう。誰なのか、までは分からないし、誰も調べようとは思わないだろうが」
「え?そうなの?」
「上から植木鉢を落とすような事をした相手、見つけてどうすると言うんだ」
その言葉に、ミハエルとネーナは互いに顔を見合わせた。
それは……何とも。
素晴らしい話、
感心したというように、ミハエルはうんうんと頷いた。
「すっげー過激なやつっているんだな、本当」
「ネーナ尊敬しちゃう」
「尊敬はしないでくれ…頼むから」
どこか疲れたようにヨハンは言い、言葉を続けた。
「時間の方はハッキリとしている。授業の六時間目の最中だ。だが……投稿してきた生徒の誰もが、その時間に抜け出してはいないらしい」
「ってことは停学の人たちとか」
「そちらにはそちらで監視が付いていたらしいから、そうはいかないだろう……ミハエル、そうだな?」
「まーな」
確かにそう呼べそうなのは、いた。鬱陶しくてどうにかしたいとずっと思っていたのだけれど。何かをする前に、いなくなってしまった…それはやや心残りではある。
やられっぱなしは気に入らないのだ。
「じゃあ、誰が犯人なんだよ。事故とかいうオチじゃねぇだろうな」
「そこまでは私も知らないが。ただアーバー・リントが手紙で呼び出されたのは事実だし、その線は間違いなく無いと思うぞ」
「迷宮入りの事件、みたいな感じ?」
「迷宮入りどころか事件として取り扱ってさえもらえない状況、だ」
「解決編も無しって事だよな、それ」
「…だからさっきから言っているだろう?」
ため息を吐いて、ヨハンは言った。
「誰も、犯人を捜そうなどとは思わないだろう。アイツらを放り出してくれたという事実だけで充分だろうからな」
次回で最後です。
「本当だ。嘘を言ってどうする」
「いやだってよ…」
ありがたい話ではあるが、ここまで突然では流石に自分でも驚かざるを得ない。
唐突に停学が解かれてしまえば、それはもう驚く他に取るべきリアクションというものがない。あるのなら、是非とも教えて欲しいものだ。
…ともかく。
そういうわけだったので、ミハエルは少しばかりヨハンの言葉を信じることが出来なかったのである。まさか、あの教員たちが手のひらを返して仲良くしようなんて、言い出すわけがないのだから。
どういうことだと首を傾げていると、後ろからひょいと顔を出したネーナがとてつもなく上機嫌で口を開いた。
「あのねー、何か来週からいなくなるんだって話なの」
「はぁ?たった五日間だけだぁ?」
「そうそ。ていうか今から帰る準備してるっていう話。だから停学退学諸々のことは無効ってことになりました、っと」
「今、ヴェーダの仕事部屋で手続きをしているところだろう」
「マジですか」
「マジもマジ、大マジよ、ミハ兄」
笑顔で妹はそう言い、ならば本当に本当なのだろうとミハエルは信じることにした。ここまで楽しげな彼女の様子に、理由付けというならばそれ以外には考えられない。
事実なのか。
今更ながらにそれを実感する。
「…ミハエル、顔がにやけているぞ」
「そりゃ仕方ねーよ、兄貴。アイツらがいなくなるんだぜ?すっげーハッピーな気持ちなんだから笑ったって良いじゃねぇか」
「他人の不幸を笑うなんて、ミハ兄ってば外道ー!」
などとネーナは実に酷いことを言ってくれるが、とても良い笑顔をしているので良しとしよう。そもそも彼女だって同じようなことを思っているに違いないのであって、これは単なるじゃれ合いなのだし。
しかし、少し考えてみると疑問が一つ。
「なぁ、兄貴。何でアイツらこんな早く逃げるんだよ」
「そーいえばそれ、私も知らない。ヨハン兄は知ってる?」
「残念だが私も知らない」
ヨハンはそう言って首を振り、しかし、と続けた。
「教師が何かをしたという話は聞かないからな、恐らく生徒の中の誰かが何らかの行動を起こしたのだろう。誰なのか、までは分からないし、誰も調べようとは思わないだろうが」
「え?そうなの?」
「上から植木鉢を落とすような事をした相手、見つけてどうすると言うんだ」
その言葉に、ミハエルとネーナは互いに顔を見合わせた。
それは……何とも。
素晴らしい話、
感心したというように、ミハエルはうんうんと頷いた。
「すっげー過激なやつっているんだな、本当」
「ネーナ尊敬しちゃう」
「尊敬はしないでくれ…頼むから」
どこか疲れたようにヨハンは言い、言葉を続けた。
「時間の方はハッキリとしている。授業の六時間目の最中だ。だが……投稿してきた生徒の誰もが、その時間に抜け出してはいないらしい」
「ってことは停学の人たちとか」
「そちらにはそちらで監視が付いていたらしいから、そうはいかないだろう……ミハエル、そうだな?」
「まーな」
確かにそう呼べそうなのは、いた。鬱陶しくてどうにかしたいとずっと思っていたのだけれど。何かをする前に、いなくなってしまった…それはやや心残りではある。
やられっぱなしは気に入らないのだ。
「じゃあ、誰が犯人なんだよ。事故とかいうオチじゃねぇだろうな」
「そこまでは私も知らないが。ただアーバー・リントが手紙で呼び出されたのは事実だし、その線は間違いなく無いと思うぞ」
「迷宮入りの事件、みたいな感じ?」
「迷宮入りどころか事件として取り扱ってさえもらえない状況、だ」
「解決編も無しって事だよな、それ」
「…だからさっきから言っているだろう?」
ため息を吐いて、ヨハンは言った。
「誰も、犯人を捜そうなどとは思わないだろう。アイツらを放り出してくれたという事実だけで充分だろうからな」
次回で最後です。
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