日輪学院 参観日と仁義なき戦い①

そんな感じで参観日の話。今回は序章。に近いかと。

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　二年生のとある教室。
　そこは、とある五名を除けば至って普通のクラスだった。普通でないと言っても内装におかしな点はないし、むしろ教室内は他の場所よりも整然としているくらいである。ただし、在籍している五名のせいで、少し有名になっているクラスと言うだけだった。
　まぁ、別にそうは言ってもそんなこと、この学院にいては特に気にされるべき箇所ではない。良くある話と、自分なら片付ける。
　しかし今日この日。
　全然よくあるわけではない話が起こっていたりした。
「…少し尋ねたいのだが、あれは…朝からああなのか」
「そうなんだよねぇ…」
　元就が問いかけに、慶次ははぁとため息を吐いた。
「朝からあんな感じ。んで俺たちもさ、理由が何なのか分からないんだよ」
「役立たずめが」
「それ酷くない！？ちゃんと情報あげたじゃんか！」
「知らぬわ。そして上級生に対する口がなっておらぬな。浅井にでも後で言っておこう」
「まぁまぁ、毛利、下級生いびりはそんくらいにしとけって」
　元親が軽く元就をたしなめるのを横目に見つつ、半兵衛は教室の中にある『異物』に視線を戻した。『異物』…といっても、正直見覚えがある相手なのだが、こうも萎れているとどうにも別人であるように思える。
　だいたい、軽く肩を叩いても反応がないし、授業が始まってもピクリとも動かない。ただただ机にうつぶせになって、魂が抜けてしまったかのように石になったかのように、そこにあり続けるだけだった。最初の授業の方でこそ教師たちが注意をしてもいたのだが、次第にそれも無くなっていったことから…どれ程までに彼が反応しなかったのかが分かるというものだ。
　動かないのもここまで来ると、別人というか屍。
　心配では無いのだが不安ではある。
　全く…一体どうしたものか。
「心当たりは無いのか？」
「俺はないなー。チカちゃんは？」
「毛利、後で浅井な」
「うむ」
「え、ちょっと待って二人ともっ！？」
　そもそも理由が見あたらない。昨日は普通だったのに。
「ごめんごめんって！冗談だから許して本当！」
　朝来たときからあぁだったし、多分、昨日の放課後当たりに何かあったのだろうが。
「浅井さんトコは勘弁してよ！」
　……。
「この通りだか、」
「…煩いなぁ、少しは静かに出来ないのかい？」
　言いながら、ぎゃーぎゃーと煩い年中祭男を半兵衛は睨め付けた。
　煩くて邪魔なことこの上ない。折角人が理由は何かと考え込んでいるのに、これでは静かに思考さえ出来やしないではないか。
　人の迷惑も考えて騒いで欲しいものだ。
　流石に今回は自分が悪いと分かったのか、途端に大人しくなった慶次に満足しながら、改めて教室の中の屍を見る。
　そもそも、朝からずっと『どうにか登校してきました』と言わんばかりの様子だったのである。一番最初に教室にいた半兵衛だから言えることかも知れないが、入ってきたときの彼の様子はまるで幽鬼だった。
　心ここにあらず、とはあのことを言うのだろう。
　朝の挨拶をそっちのけて思わず大丈夫かと問いかけた声さえ耳に入っていない様子で、自分の席にフラフラと座って…それからずっとあんな状態。
「…竹中半兵衛、そなたは何か知っておるのか？」
「朝からずっとあぁだったという事くらいしか知らないよ」
　生徒会にいつまで経っても顔を出さない政宗を気にかけて、いつもの如く元親を引き連れてきた生徒会長には悪いが、全くの無駄足だったと言わせてもらおう。
　肩をすくめて答え、ふっと浮かんだ言葉をそのまま口にする。
「でも、もしかしたら片倉先生なら知っているかもね」
「ふむ…成る程、それは有り得ぬ話ではない、か」
「…は？」
「どゆこと？」
「……愚鈍な者たちよ」
　呆れを通り越した絶対零度の視線をもって、元就が首を傾げた残り二人を見据えた。冷たすぎるその視線に震え上がった慶次がこちらに助けを求める視線を送ってきたが、あえて視線を逸らすことで無視。自業自得という言葉をそろそろ知った方が彼のためにもなるだろう。
　だが……これ以上は何も言う気のないらしい生徒会長の代わりに、解説くらいはしてやるべきか。そうでもしないと分からないだろうと判断して口を開いた。
「片倉先生は、政宗君の家に代々仕えてる人だよ。もしかしたら何か知ってるかもしれない」

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政宗に何があったのかはまた後ほど。