日輪学院 参観日と仁義なき戦い⑧

忍たちはどの時代でも忍だということです。

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　その足音を耳にして、かすがはハッと顔を上げた。
「…佐助」
「はいはい。俺様も分かってますよっと。伊達ちゃんは…分かってるねぇ…」
「……アイツとは長い付き合いだからな…あーもう、どうりゃいいんだよ…」
「政宗…」
　かなり急速に落ち込んだ政宗に同情して思わず肩をポンと叩いてやると、何だか……少し救われたと言わんばかりの視線が向けられた。そこまで追い詰められているのかと、そういえば屍になっていたのだという話があったのだと思い出した。
　彼にとって、この話は鬼門なのだろう。
　それにしても……ここまで落ち込んでいる政宗というのは珍しい。
　新鮮、ではあるが、それだけではなく……何だろう、いつもは強気な相手がここまで弱気になると、妙に守りたいような気分になってくる。
　この気持ちは…同情ではないだろう。
　そんなことを思っていると、佐助がパンパンと手を打ってさて、と前置いていった。
「じゃあ、どうしましょうか」
「どうするもこうするも、一つしか道はないだろう。匿うのなら最後まで、だ」
「じゃー、そういう方向で。ならさ、俺様が片倉先生を誤魔化すから、かすがは伊達ちゃんと隠れちゃってくれる？」
「隠れるって…どこに隠すつもりだ？」
「ほら、あそこ」
「……いやマジ？」
「あぁ、あそこなら気付かれないか」
「いやいやいや、アンタら正気か！？」
「正気も正気。大丈夫だって。かすがに任せれば完璧だから。こう見えてこの子って随分と凄いんだって。普通の女子高生じゃないしねぇ？」
「それは貴様も一緒だろう。それよりも、政宗、覚悟を決めろ」
「決めろって…それしかねぇの？」
「無い。ではそういうことだから実行する」
「…やっぱ廊下に逃げ」
「だーめッ！」


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　小十郎が三年のとある教室を覗き込むと、そこには佐助がいた。
　最初はこちらに気付いていない様子を見せていた彼だったが、一歩教室の中に足を踏み込んだところで、気付いたらしくこちらを向いてひらりと手を振った。
「どーも、片倉先生。何か用事？」
「こちらに政宗様がこなかったか？」
「んー、来てないけど、どうかした？」
「いや…来てねぇなら良い」
　口ではそう言いながら、しかし小十郎は教室の中を油断無く見渡した。絶対に、ここに政宗がいると直感が告げている。そして、この手の直感が外れたことは一度たりとも無い自分だ、ここに政宗がいないという可能性はほとんど無い。
　怪しいのは教卓の下と掃除道具箱の中だろうか。
　ならば調べるだけだと、小十郎は教卓の下を覗き、背丈ほどもある掃除道具箱を開いて確認したが、結果としてそこには誰もいなかった。そして、この二箇所以外に隠れる場所は無い。ということは……直感が、外れたと言うことだろうか。
　釈然としない思いを抱いていても、今見た光景は取り消せない。
　ここにはいなかったのだと思うことにして、小十郎は教室を去った。


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「どうだった？あんまり出来ない体験だったでしょ？」
「あんまりしたくねぇ体験だったぜ…」
「見つからなかったのだから良いだろう」
「落ちたらどうすんだよ！」
　政宗は窓の外から教室の中にいる佐助と、こちら側にいる自分に、噛みつくように言った。……確かに、初心者にこれは少し問題だったかも知れない。
　だが、これ以外に手がなかったのも事実だろう。
　窓の外の、本当に小さな屋根のようなスペースに立って、腕を組みながら考える。丁度その屋根部分の上側が教室の床と同じ高さにあることから、これは随分と簡単に降りれるし足場もしっかりしているパターンではあるのだが、やはり三階という高さが問題だ。
　お陰で、そんなところに出ているとは思いもしない小十郎を欺くことが出来たのだが。
「しかし政宗、お前、そろそろ本当のことを言ったらどうだ？私は知らないんだぞ」
「…あんま言いたくねぇけど……まぁ、助けてもらったしな…」
　どこか、諦めたように彼は嘆息した。
　そして、言った。
「俺の家……極道なんだよな」

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まぁ、お家に関しては予測済みな皆様もいらっしゃったでしょうが…。