弟妹同盟と子供⑤

騒動の後に。

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「はい、これ。きゅーきゅーばこ」
「さんきゅ。ついでに恭弥の怪我の消毒してやれぇ」
「ダメだよ、すく。そうしたらそっちの二人の方にいくんだよね？だからダメ」
「そうだね、ダメだね、スクアーロ」
「…そっちはそっちで頼むぜぇ」
　どうにも子供二人に勝てないらしい鮫は、申し訳なさそうにこちらを見た。雲雀が『二人』と言っている時点で、色々ととばっちりを食っているディーノの事が思考の外にあることに関しては、もう気にしない方向でいくことに決めたらしい。
　自分の場合は怪我らしい怪我などしているわけもなかったので、まぁ、その対応でも苛つきはするが問題はない。だが、気絶している雨の守護者の方は結構満身創痍なのだが、どうするつもりなのだろう。やっぱり放置か。まさか自分に手当をしろなどとは言い出さないだろう。
　山本に関しては意識を取り戻してからディーノがどうにかするだろうと、両方満身創痍ではあるが思うことにして、ぐるりと部屋の中を見渡す。
　案外、あれだけの騒動やら戦闘があった割には綺麗な物だった。調度品が壊れていたり壁にヒビが入っている程度で、部屋は部屋として成り立っている。
　いつもの自分とあの餓鬼二人の戦闘の場合は部屋が一つ完全になくなったり天井が消えたりと言うことが多い事を踏まえてみると、かなり珍しい結果である。てっきり始まった当初、そうなるだろうと予測していたのだが。
「…なぁ、ボスさん、とりあえずアンタが何思ってるか分かるから言っとく」
「何だ」
「今回はアンタが特に何もしなかった事と、恭弥と凪が小さくなってたからこうなったんだぁ。…だから出来ればこれからも、せめてアンタだけはこんな感じでやってくれねぇ？」
「断る」
　どうしてそんな面倒な気遣いのような物をしなければならないのだ。
　腕を組んでスクアーロを見下ろすようにすると、だよなぁ、と彼は諦めたように息を吐いた。初めから、提案こそしたものの期待はしていなかったようだ。
　ただ、その言葉の後に一種不審そうな表情を浮かべ、首を傾げる。
「けどなぁ…そういや何で本気じゃなかったんだぁ？アンタなら、ここぞとばかりに山本とか巻き添えに全員消しかねないと思ってたんだけどよぉ」
　何でもないように紡がれた言葉に一瞬言葉に詰まり、それから、ため息を吐いて未だに訝しそうに考え込んでいるスクアーロを見て、再び、息を吐いた。
「…一度、テメェの中の俺に関して確認しておく必要があるな」
「けど事実じゃねぇか」
「否定はしねぇ。だが、肯定もしねぇ」
「…？ワケ分かんねぇぞぉ？」
「分からねぇなら一生考えてろ」
　言って、ザンザスはスクアーロが子供二人と一緒に座っていたソファーの、空いている部分に腰掛けた。鮫の膝の上にクローム、その左隣に雲雀がいたので、空いていた右隣に、である。すると雲雀から鋭い視線が送られてきたが、あえて意識の外に出す。
　こんな子供に付き合い続ける事ほど面倒なことはない。
「凪、お前はボスさんの言葉分かったかぁ？」
「うぅん…ぜんぜん、分からない」
「じゃあ恭弥はどうだぁ？」
「分かる気もないよ、すく」
「お前なぁ…」
　呆れの表情を浮かべるスクアーロから、雲雀はぷいと視線を逸らした。
「その人のことはなしてるとき、すく、とってもたのしそうだよね。さっきから。今は、ちょっとちがうけど、でも、気に入らない」
「恭弥…」
「だからねむる。なぎ、ちょっとよけて」
「うん…じゃあ、わたしも、ねむる」
　やや不満げな顔だったクロームも雲雀に同意したようで、雲雀は頭をスクアーロの太ももの上に乗せ、クロームは座っていたところから少しずれた所で鮫の体にもたれかかるようにして目を閉じた。
　直ぐに聞こえてきた寝息に、所詮は子供かと呆れる。
「餓鬼のくせにふて寝か」
「ふて寝、っていうか疲れただけじゃねぇのかぁ？体力も子供並だろうしなぁ」
「は。その程度で俺に攻撃してきやがったとはな」
「ま、子供ならではの無鉄砲さってことだろーよ」
　ふぁあ、と欠伸をしてスクアーロは目を擦った。
「う゛ー…俺も眠くなってきたぜぇ…ボス、ちょっと借りるなぁ」
「…オイ」
　良いとも悪いとも言わないうちに、こちらにもたれるように体を傾けた鮫に対して思わず半眼になるが、しかし、直ぐに表情を別の物に変えて息を吐く。三回目。
「っち……随分と俺も…」
　呟きは、誰にも訊かれることなく宙に消えた。

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最後は微妙にほのぼのですが、それが気に入らないボスさん。何か感化されて慣れちゃってるから。