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拍手再録です。



03:ほんの些細な音にさえ(AN00
 
 
 現在、プトレマイオス内では困ったことが起こっていた。
「……アリオス、手を放してくれないか?動けないんだけどな」
「……」
「……アリオース」
「…っは…な……何!?おばけでたの!?」
「いや、出てないからな?…んで、さ」
「……」
「…セラヴィー」
「俺にふるな。元凶はダブルオーだ」
 しかし、その元凶がこの場にいないとなると、やはり彼が助けを求めるのは自分に対してなのだろう。いつもならば自分でどうにかしろと言うけれど、今回は彼のせいではない上にどうしようもないだろうから、そうも言えない。
 今、ケルディムはアリオスが右腕をしっかりと掴んでしまっているために動けないのだ。
 まさか、振り払えと言えるわけもない。なだめるにしてももっと時間は必要だろうし、そもそも先ほどから実行されている。
 事の始まりはダブルオーがどこからともなく仕入れてきた怪談話。それが、後ろから殺された死体がついてくると言うもので。日常的に人間を殺している自分たちにはまさに他人事ではない怪談話で、それが見事にアリオスの恐怖心に的中してしまったのである。
 結果、直ぐ側にいたケルディムがこんな目にあっているのだった。
「お前…恐がりは分かるけどな、もうちょっとさ…」
「あうぅ…ごめんねごめんね…でも……」
 苦笑気味のケルディムに、アリオスが申し訳なさそうに言葉を返そうとした、その時。
 かたん、と小さな音が鳴った。
「ひぅぅぅっ!?」
 その音に過剰反応したオレンジ色の同胞は、恐怖のあまりかケルディムの首に腕を回すようにしがみついた。…まぁその反応は予測できたし良いのだが、問題は、力が入りすぎて緑色の同胞の呼吸が大変なことになっていることか。一応今は人体を取っているのだし、急所をしめられると流石に死ぬ思いをすることにはなる。
 死にはしないだろう、それでも。思いながら、セラヴィーは振り返ることなく背後……音が鳴った方に声をかけた。
「随分と芸が細かいな」
「こういうのは、果てまでやる物だとハロが言っていた」
 ダブルオーの言葉に、頭が痛くなった。…ハロは彼に何を教えているのだろう。

(2010/04/18)
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