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茶色のお題ラストですが…ラストがこれでいいのか。
20.グッドニュース
『聞いて!宝くじが当たったのよ!』
なんて、突然艦内放送で告げられた日には一体どうしたらいいのだろうか。
呆れながら自室を出て、意図不明な放送を行った人物がいるであろうブリッジへと歩を進める。とりあえず、一言くらい文句を言ってやることにしよう。
それにしても、宝くじまで買っていたとは驚きだ。酒に博打に……これだけなら問題なくても、博打はともかく酒がとんでもない事になっているから…ダメ大人だと、形容したって文句は言えまい。
将来、自分はあんな大人になりたくないと思いつつ、ブリッジ……ではなく、ブリーフィングルームの前で足を止める。
……何故だろう、この場所に入らなければならない気がする。
だが、最近はこの部屋も使われていないし、特に入って何かあると言う事もないはずなのだが。それでも直感が入れ入れと告げてくるのだ。
どうしようかと、考えたのは一瞬だった。
ティエリアは足を、一歩踏み出した。
「宝くじが当たったって…何等が当たったんだよ」
「聞いて驚かないでね!一等よ一等!」
「凄いっすよね!」
「うん!ホント凄い!」
「一等ってあるんだな…本当に」
ブリッジ内が明るい賑やかさに沸き立っている中。
刹那とアレルヤ、そしてフェルトは状況に取り残されていた。
三人が三人とも、宝くじと言う存在から酷く遠い立ち位置に存在していたため、一等と言う響きから『凄い』事は分かっても、『どのくらい凄い』のかがいまいちピンと来なかったのである。
「……一等は良いんだが」
少年兵として日々を過ごしていた刹那は腕を組み、スメラギが持っている紙きれを見た。
「どのくらい…凄いんだ?」
「とーっても凄いのよ!」
「それじゃ分かりませんよ…」
被検体であり脱走後もそんなものとは無縁だったのであろうアレルヤも、ひどく困ったように眉を寄せる。
世間から切り離された生活を送って来たフェルトにしても、二人の気持ちはよくよく分かる物だったので、共に頷く。
対してスメラギは、アレルヤよりも困ったような表情を浮かべた。多分、どうやって答えたら良いのかが分からないのだろう。こんな事を聞いてくるような人が、自分たち以外にいたとも考えにくいから。
そこは申し訳ないけれど、分からないのは分からないので仕方がない。
三人そろって戦術予報士の言葉に注意を向けていると、彼女はそうねぇ、と前置いて口を開いた。
「デュナメスが重機を使わずに千機……いえ、一万機切り出来るぐらいかしら」
「それは良いんですが、スメラギ・李・ノリエガ」
と。
突然開いた扉の向こうから、凛とした……少し怒気をはらんでいる声が届いた。
「これは何枚買った末の結果です?」
それの持ち主は、ヴァーチェのガンダムマイスター…ティエリア・アーデ。
彼は手に何枚かの紙切れを握って皺くちゃにした状態で持っていて、額に青筋は浮いていないものの、背中いっぱいに怒りを背負っていた。
ということはまぁ、あれだ。
戦術予報士なのに、ミスをしたのだろう。
ぼうっと両者の様子を見ていると、ティエリアがイライラを押さえようともせず、あるいは抑える事も出来ない様子で、言葉を続けた。
「ブリーフィングルーム、見せてもらいました。…あの紙切れの山は何ですか」
「…宝くじよ」
「何枚買ったんですか!」
「だってぇ…たまには生活に潤いも必要でしょ?」
「貴方のそれのレベルだと、潤いすぎて大洪水が起こります」
「……留美だって許可くれたし」
「彼女とは住んでいる世界が違うと知ってください!」
……なんて調子でいつまでも続きそうな会話の応酬に、思わず刹那とアレルヤと顔を見合わせた。ロックオンたちはロックオンたちでやれやれと肩をすくめている。
とりあえず、宝くじの一等がどれ程凄いのかは曖昧に分かった。
けれど、一つ、ハッキリと分かった事がフェルトにはあった。
一等を取ると言うのは、とても大変なことなのだろう。
まぁ、ほのぼのもどきって事で。
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