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そういえばまだラストをあげてなかったよねって…。
危惧していた状況が目の前に広がっていた。
この話に、元就が出てくることを密かに政宗は恐れていたのだ。理由は、仮に母と意気投合でもして自分を連れ帰る方向で話を進められたとしたら。ただでさえ母にも弱いというのに、そこに元就が出てきてしまったら逃げれる物も逃げられ無くなるではないか。
しかし、今。
危惧していた方向とは違う方向で、事態は危うい方向へと向かっていた。
「…今、何と言ったのです?」
「だから、政宗を引き渡すわけにはいかぬと申したのだが」
元就が、母と対立する姿勢を見せたのだった。
てっきり母とは共闘するのではないかと思っていた自分からすると、拍子抜けすると同時に肩透かしをくらったような気分であるのだが、そうであるというのに、事態は悪い方向へと向かってしまっているような気がするから嫌な話だけれど。
「政宗は御母堂の提案を拒んでいるようなのでな」
「これは家の問題。あなた方が口を出すような話ではありません」
「だが、友人として口を挟むことくらいは許されよう?」
「あ、お前も一応友人って言葉知ってたんだな」
「何を無礼なことを。貴様のようにスポンジの脳みそではないのだ、その程度知っておらなんでどうする」
「……さいですか」
「うむ」
「……」
「……」
元就と元親のとんとん拍子の会話の間。
母が黙り、政宗は思わず元就を凝視した。
…今、友人って言った?あの元就が?
その言葉を元就が使うことに関しては、やや元親と同じような見解に政宗はあった。だから、仮に日常生活の中でそう呼ばれた場合、時や状況によっては少し怖気が走る事があるかもしれないが……何か、この状況のせいだろうか、素直に今なら泣ける気がする。というか、ちょっと目が潤みかけてる気がする。
「…さて、話が逸れたが御母堂よ、故に我は反対の立場に立たせていただく」
「そうですか…それでも政宗は連れて帰ります」
「させぬがな。…しかし、何故今なのだ?」
「と、言いますと?」
「別に、高校生である今からそのような話をせずとも良いのではないかと……我は思うのだが」
「かもしれません。確かに」
母はこくりと頷いた。
「ですが、所詮それは話の先延ばしでしょう。高校を出ようと在学中であろうと、政宗はこちらから行動を起こさないと跡継ぎとなろうなどとは思わないかと思いますので」
「では、どうしてそこまで嫌がる物を跡継ぎにしたがるのだ」
腕を組み、元就。
…そして今ようやく気付いたのだが、どうやら元就は全て知っているらしかった。先に母と接触していたような様子もあるし、その時に事情は聞いているのかも知れない。となれば元親も知っているだろうが、彼の場合はそれが今どうというわけにもならないだろう。こういう言葉の奥州は生徒会長の独壇場だ。半兵衛だったらまだ、参戦の余地はあろうが。
にしても、だが。言い合っている二人の間の空気がどんどん冷え込んでいくのは気のせいだろうか。……気のせいだと思いたい。
「政宗が跡を継ぐに相応しいからです。それ以外に理由が必要でしょうか?」
「それでは政宗の意思は関係ない、と」
「いいえ。政宗が頷かなければ正式に跡継ぎにとは出来ません」
だからこそ、今だってこうやって自分はここにいることが出来るのだが。
「ふむ…ならば余計に政宗を引き渡せぬ。拒否しておるのであろう?」
「……それは」
「ならば結論など出たような物。どうせ今すぐに決めねばならぬ話ではないのだろうし、結論を後に回すことも考えに入れるべきではなかろうか?」
「…えぇ、そうかもしれませんね」
嘆息して、母は前髪をかき上げた。
「…分かりました。今回は貴方の言葉に免じて引き下がりましょう。ですが」
そうして鋭い視線を元就に向けて、言う。
「次は、こうはいきません」
「それは楽しみだ」
「…では」
また次の機会に、と。そう言って母は背を向けた。
それを見送る生徒会長の所へと向かい、政宗はその隣に立った。
「ありがとな」
「…生徒会長としてやるべきことを成しただけだ」
答える元就はそっぽを向いていて、それが照れ隠しであると気付いて政宗は笑った。
かくして。
政宗は、この学校に残ることが決定した。
…今のところは、だが。
次回がありそうな幕引きですな…。
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