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未来編の話だと思います。
089:泣かないで
「やはり泣いていたか」
そんな声に、ふっと顔を上げる。
するとそこにはラルがいて、どこか呆れたような、けれど違う全く別の何らかの感情をはらんでいるような表情を浮かべていて、自分をの見下ろしていた。
どうしてここにいるのだろうと、少しぼんやりとした思考で考え。
ふっと、自分の現状を思い出して慌てて目元を擦った。
「あぁ、あまり擦るな。赤くなる」
今度こそ本当に呆れているような声音が降ってきて、ハルは何となく笑っていた。理由は分からない。もしかしたら、いつもと変わらない声に、ホッとしたのかも知れない。
けれど、それと涙が止まるのとは別問題らしい。
先ほどよりも勢いよく、枯れることなど無いかのように溢れ続ける涙に、結局、全てを拭うのは諦めた。目元が赤くなるなんてレベルでは済まないように思ったのだ。それでは、隠れて泣いている意味が無くなってしまう。
気付かれて、心配をかけたくないのだ。
その点において、今回ラルに見つかったのは失敗だったかも知れない。
これからはもっとちゃんと隠れないと。そんな少しずれているような目標を立てながらもハルはさしのべられた手を取って立ち上がった。
「家が恋しくなったか?」
「はい…多分、そうだと思います…」
「そうか。…まぁ、落ち込むなとは言わない」
ポン、とハルの頭に軽く手を置いて、それからラルはどこかへと行ってしまった。
心配してわざわざ来てくれたのだろう。それでも最後まで一緒にいようとしないラルの、ほんの少しの頑なさと言うべきか…不器用さが、何とも言えず心に染みる。
素直じゃないけれど、真っ直ぐで、とても優しい人。
だから、あの人は泣くな、とは言わなかった。
それは、それが自分に残された数少ない心の自衛手段だと分かっているから、だろう。
考えてみればみるだけ。
嫌いには、絶対になれない。
そんな人に出会えた今を、泣かずに過ごすことが出来ればいいのにと、ふと思った。
ラルが好きです。もっと素直になればいいのに…。
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