式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
幸村に置いて行かれた佐助と政宗の話です。
02:歩く速度
「ったく…俺らを置いて行くんじゃねぇっての」
「確かにねぇ。俺様だけならともかく、竜の旦那置いていったら意味無いよね」
「全くだぜ」
などと言い、政宗はため息を吐いた。
その気持ちはとてもよく分かると佐助は苦笑した。この辺りを知らない彼に案内を使用と買って出たのは幸村であって、だというのに置いて行ってしまうのをどうかと思うのは至って普通の思考だろう。そして……多分、幸村は置いていった自覚すらないのだろう。
それが簡単に想像できて、佐助はとほほと嘆いた。もう少し周りのことを考えることが出来るようになってくれないと、これからがとてつもなく困りそうな気がする。
今でも困っているという事には今は目を背けておく。
言い出したら色々ときりがないのである。
「ていうか旦那、一体どこに行ったんだろ」
「I don’t know. 知るかンな事」
「だーよねェ…」
「つーかアンタには心当たりねぇのかよ」
「ありすぎて分かんないって状況」
止まっているならきっとどこかの茶屋だろう。しかしその茶屋の候補が多すぎる上に、そろそろ自分たちの不在に気付いて探し回り始めている頃だろう。
ならばこちらは動かない方が得策だろう。自分たちも探し回ってすれ違いでもしたら余計に時間が掛かる。だからこそここは、こちらを見つけてくれるのをこの辺りで止まって待っておくのが一番無難なのである。
どこか丁度良い場所はないかと探してみれば、まるで用意されていたかのように一軒の茶屋を見つけた。
「ね、旦那が俺様たち見つけるまであそこの茶屋でのんびりしてない?」
「Why?こっちから行かなくて良いのかよ」
「すれ違ったら困るでしょ」
「あぁ、それもそうだよな」
納得してくれたらしい政宗は頷いて、佐助の後に続いて茶屋に入った。
それから適当に空いている所に座って、思い切りくつろいだような様子を見せた。一応安全を保証しているとは言っても彼の領地外なの、にそこまでのんびりとしてしまっても良いのかというくらい。
しかしそう言うことに関しては特に言うべき事柄もない。今更だし、こちらもこちらでそんな感じで訪れる若い虎もいるワケなので。
まぁ実際、完全に警戒を解いているわけではないのだろう。現に腰には六爪の中の一本が存在しているし、のんびりとしている中でも身のこなしに隙はない。
流石は殿様、というべきか。
「おい忍、中に入ってても問題ねぇのか?」
「そこは問題ナシ。旦那の野生のカンを侮ってもらっちゃ困るよ」
「勘かよ」
「そうそう。でもその勘が中々食わせ物でさ、例えば厨房の辺りに菓子が用意されたとして、それを直ぐさま察知しちゃうわけで」
「勝手に食っちまう、と」
「そう言うこと。よく分かってるじゃん、竜の旦那」
「そこそこ長い付き合いだしな」
軽く肩をすくめて政宗は答え、運ばれてきた団子に手を伸ばした。
「んでそこそこ付き合いの長い俺が言うのも何だけどな、そろそろ見つけてくるんじゃねぇのか?」
「そこそこの付き合いでそれだけ分かれば充分でしょ」
「ふぅん…そうなのか?」
「いや、普通にそうだと思うけど」
対して茶を取り、佐助は店の入り口へと視線を向ける。
「…後一人分、頼んどくべきかな?」
「そんくらい自分でやらせろ。甘やかしてると独り立ちできねぇぞ」
独り言のように零した言葉にそんな風に返されて、少し困ったように笑う。甘やかす、というのは間違っているようにも思え合っているようにも思え、どういう反応をするべきかが一瞬分からなかった。
そしてそう言うときは、笑って誤魔化すのが一番。
そんな感じの笑みだった。
じ、とその笑みを見ていた彼はふいと視線を逸らし、団子を口に運んだ。
「その調子だと独り立ちはまだ先らしいな」
「…けどそれ、よく考えたら竜の旦那に言われたらおしまいじゃない?」
「Ah?どういう意味だ?」
最後のセリフ、佐助は小十郎の事を思い出しつつ呟いております。
PR
この記事にコメントする