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途美設定でマリナとシーリンです。日常の一風景。
11.インスタントカメラ
パンパンに膨らんだ紙袋を持って音楽室を訪れたのは放課後の事だった。
本当は昼休みにでも来ようと思っていたのだけれど、クラスの用事でどうしても時間を空ける事が出来なかった。明日に回す事も考えたのだが、やはり早めの方が良いだろうと判断して放課後を選択したのである。
それに良く考えたら、そのイタズラを行うのは放課後の方が適切だった事もあったので。
イタズラに関しての反応が楽しみだと微かに笑みを浮かべつつ、マリナは、適当に合わせた机の上に紙袋の中身をばら撒いた。
その中身を見て、シーリンが目を細める。
「……コレ、何かしら」
「写真よ?」
「それは見たらわかるんだけれど……明らかに盗撮写真が混じっているような」
「気のせいだと思うわ」
盗撮なんてそんな、犯罪すれすれ……いや、それとも犯罪そのものだっただろうか?……ともかく、そういう事をする気は自分にあるわけがないではないか。
だって犯罪だし。
ただ、まぁ……強引に、部屋に突撃して撮った事とかはあったかもしれないし、隠れて撮ったわけでは無くても相手が気付かなかった事だって、あったかもしれないけれど。
それは自分のせいではない、ということで。
「……それにしてもマリナ、最近貴方がカメラを持って学校内をウロウロしていると聞いていたけれど……こんな事をしていたのね」
一枚の写真を手にとって、彼女は呆れたようにため息を吐いた。
「しかも妙に綺麗に撮れているし……」
「途中からどんどん上達していったの。ほら……これが初期の写真なんだけど」
言って、一枚を写真の山から取り出して渡す。
随分とブレが酷いそれは、確か一番最初にシャッターを押した時の物だ。走りながら撮ったから通常以上にカメラがぐらついて、結果としてこんな出来になった。
ちなみに走りながら撮った理由は、被写体が走って逃げようとしたからである。
……何で逃げたんだろう、刹那。
今度訊いてみようかなと思いながら、それをシーリンに渡す。
「酷いでしょう?誰を撮ったのか分からないくらいに」
「…刹那じゃないの?」
「あら?何で分かるの?」
「何となくよ……でも、貴方の言う通りね。随分と技術が向上したみたい」
「インスタントカメラを五つくらい消費したからかしら」
「そんなにやるならデジタルカメラでも使えばよかったのに…」
「あ、それもそうだったわ」
すっかりその存在を忘れていた。
ぽん、と手を打つと二回目のため息を吐かれた……何でだろう。
思わず首を傾げたが、当然答えなど出るわけも無く。
まぁ良いかと思って、とりあえず話を進める事にした。
「それで、これが二番くらい最近に撮った写真なの」
「ティエリアとリジェネの言い合い?…じゃないわね。リジェネに対してティエリアとハレルヤが何か言っているのね……何をしたのかしら」
「リジェネが、ヴェーダの書類を片付けてたティエリア達三人の邪魔をしたの」
「三人?……あぁ、本当。ちょっと見にくいけれど、奥の方にアレルヤもいるわね」
「一人で頑張って散らばった書類を片付けてたわ。大変そうだったから手伝ったのよ」
実際、あれを一人でやるのはキツかっただろう。
それを見て、実は一瞬くらいはどうしようかな、と考えたのだ。自分が手を出さなくても三人の中の誰かが気付いたら手伝うかな、なんて。
けれども気付いたのはリジェネだけの様で、しかも彼は手伝う気は全く無さそうだった。
「何で手伝わないのかしら…」
「……?」
「こっちの話だから気にしないで」
「別に良いけれど……で?これが二番目って事は、一番目があると言う事でしょう?」
それは見せてくれないのかしら、と尋ねてくるシーリンに、マリナは満面の笑みを浮かべて一枚の写真を手渡した。
紙袋ではなく懐から出てきたそれに彼女は少しだけ眉を寄せたが、それでも手に取る。
そうして……写真を見て、固まった。
「じゃあ、私は帰るから」
素早く写真を紙袋にしまいながら言ったが、未だに硬直しているシーリンからは返事が返ってこない。予測どおりなので、あまり気にはならないけれど。
「また明日」
笑顔のままそう言って、教室のドアを開けた時でさえシーリンの時間は止まったまま。
あんな素敵な反応をしてくるだなんて、写真を撮る練習を続けた甲斐があったというもの。彼女の様子に満足しながら、マリナはドアを閉めて呟いた。
「お幸せに、ね?」
さてはて何を渡されたのでしょうね?
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