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三年生の四名様、佐助、かすか、元就、元親のお話です。今回はテニス。
こんな事を嘆いたところで意味は無いとは思う。分かっている。しかし、あえて言わせてもらおう。
……一体、どうして体育を二クラス合同でするような事なんてあるのだろう。
もっとも、こんな話はいたる所にあるだろうし、無くなったらと考えた所で変わるような物でもないだろう……というか、自分はその制度が無くなって欲しいわけでも嫌いなわけでもないし、制度自体を嘆いているわけではない。
嘆いている事は制度では無くて、その制度によって引き起こされた今と言う状況。
すなわち。
「死ねや元就ッ!」
「ふん!貴様のごとき愚か者に点を取られる我かと思うたか!」
……元親と元就の一騎打ちの傍で、体育の授業を受け続けなければならない、という状況だ。
幸いと言うべきか、クラスが違うから合同でさえなければ体育の時間だろうが別の時間だろうが、この二人の争いに巻き込まれる事などあろうはずも無い。だが、実際にはそのような制度があったりするわけであり。
これならきっと、嘆く理由が他者にも分かってもらえるだろう。
そう思って、はぁ、と佐助はため息を吐いた。
「……どうした?」
突然のため息に訝しさを覚えたのか、かすかが首を傾げた。ちなみに彼女はネットを挟んで佐助の向かい側にいる。
「いやねぇ……お隣のコートのお二人の事を思ってさ」
「あぁ……アイツらか」
「先生の機転?……じゃないね、賢明な判断のお陰で、二人とも端のコートに追いやられて、隣り合うのは一組だけ、っていう状況になったわけなんだけれど、」
「その一組の犠牲者が私たちだと言うのは何とも言えないな……」
「ま、俺様たち以外だったら死ぬかもしれないけどね」
「同感だな」
隣のコートから飛んで来てはこちらのコートに減り込むボールを軽く避けつつ、今度は二人してため息を吐く。どうしてもっと周りに優しいプレーが出来ないのだろうかと自分は思いながらで、きっと彼女の方もそうなのだろう。
「っていうか、何であの二人も飽きないんだかねぇ……」
「飽きた飽きたで怖いがな」
「……まぁ、それは否定しないけどさ……」
「それ以前に、どうして決着がつかないのかが問題じゃないか?」
「だよねぇ。……いや、ていうかさ、ついてるんじゃない?決着」
「……そうなのか?」
「生徒会長様がいつも勝ってると思うよ。体育の時間以外でもだけど」
「……そういえばそうか?」
佐助の言葉に、記憶をたどろうとし始めた彼女を眺めながら、思う。
今の言葉に間違いは無い。いつも元就が勝って、それを悔しく思った元親が次は勝とうと何度も何度も再選していくのである。それを元就が受け流す事無く受け入れれてしまうから、こんな死闘が何度も開催されるのだ。
多分、元親だって有り得ないほどの差があったら、そこまで勝負に躍起になる事は無いだろう。その前に自分の力量を上げようとするはずだから、そこまで勝負の回数が多くなる事は無いだろうから。
だが、見た所、元親と元就の力量はほとんど互角。
それでどうして元就が毎回勝っているのかと言えば、それは彼が最後まで冷静だからに他ならない。熱くなる元親とは違って、彼は『そうするべき場所』で的確な対応ができる。その差が最終的に二人の勝敗を決するのだ。
たとえ二人とも初体験の何かで勝敗を競おうとも、結果は恐らく変わらない。呑み込みが異常に速い元親よりも、何故元就が強くなるのかは分からないが。
「ま、どうせ意地とかそーゆー事なんだろうけどねぇ」
「何だ?二人の事か?」
「いいや、生徒会長様の勝利の事」
応えながら、佐助はラケットを振る。
全く、本当に彼ら二人のコートの隣は大変なのだ。たまに飛んでくるボールをよけながら、延々とラリーを続けなければならないのだから。
いっそこのコートは開けてしまうべきではないだろうかと思いながら、再び飛んできたボールを軽く返す。
……この、ボールを返すと言う事にも注意を払わなければならないのだ。二人の様子を観察して、自分がボールを打った方に二人のボールが飛んできたりしないか、という事を確認しつつラケットを振らなければならない。
何でこんな上級者向けの事をやり続けているのだろう……なんて。
「もう、気にしてないけどね」
かすかに聞こえない程の声で呟いて。
佐助は、返されてきたボールを打ち返した。
授業が始まってからずっと途切れないラリーは、まだ続く。
とにかく打ちまくっているアニキと日輪と、実はすごすぎる忍二人を書きたかったのですよ…。
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