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来神四人組でお酒飲み。来神時代です。
始まりはほんの些細な思い付きだったはずだ。
ナイフが刺さらないトラックではね飛ばしても生き残る、その上自分の手駒になる気配が無い、人間の皮を被っているとしか思えない化け物。
そんな彼をどうにかするべく、弱みを握ろうと考えて。
酒でも飲ましたらいいのではないかと思いついて。
流石に二人きりだと警戒して来ないだろうと思って、新羅と門田を誘ってみて。
高校生ながらに酒盛りを開始して。
非常に度の強い酒を瓶でだいたい三本くらい飲ませて。
「……なのに何で君はまだそう大丈夫そうなんだろうね?」
「ん?何か言ったか?」
「いいや、別に」
酒……に見せかけたジュースを飲みながら、臨也は答えた。
酒盛りは殆ど終盤に突入していて、新羅は見事に酔いつぶれてソファーの上で伸びてしまって、門田は机に突っ伏して意識を失っている。
だというのに、静雄は未だに酔った様子も無い。
これはどういうことなのだろうかと、ため息でも吐きたい気分だった。強化されてしまっているのは筋力とか関節とか骨とか、そういった箇所だったと思うのだけれど、もしかしたら内臓のあたりまで強くなってしまっているのだろうか。
だとしたら嫌だなぁ、なんて思いながら、静雄のグラスに酒を注ぐ。
「シズちゃん、君の両親ってお酒強い?」
「どうだかな……多分、並くらいじゃねぇかな」
「ふぅん……」
なら、とりあえず、酒の強さが遺伝したとか言う選択肢は除外しておこう。
……それにしても、自分の問いかけに素直に答えるなんて……今日、この場での喧嘩人形は気味が悪い程に素直だった。酒盛りが始まる前は随分と苛立っていたというのに。本来ならば殴りかかられない分喜んでいい場面なハズなのだけれど、何故だか……一杯目の酒を飲む前の苛立った彼が懐かしい。
そんな事を思いながら、再び空にされたグラスに酒を注ごうとしたところで。
「なぁ、臨也、新羅って双子だったんだな」
なんて、ふいに静雄が零した言葉に臨也は固まった。
こちらが衝撃を受けているとも知らず、不思議そうな表情で喧嘩人形は首を傾げる。
「あれ……?三人になった?……三つ子かよ。一か所に固まって寝てるなんて結構仲が良いんだな。……あ、門田も三つ子だ」
「……ねぇ、シズちゃん」
もしかして、酔ってる?
そう訊こうかと思ったのだけれど、止めた。彼の顔は冗談を言っている顔ではない。
ということはつまり、本当に酔っているのだ。
しかし……そうなってくると、素直だった理由の推測に多大な変更を施さなければならない気がする。つまり、一杯飲み干すだけで既に酔っていたのだ、と。
弱いどころの話じゃあ……なかった。
何せ一番最初は怪しまれないように、一番アルコール度数の低い物を選んだのだから。
「……成程……シズちゃんの弱点はお酒だったのか……」
「一人で何呟いてんだよ、臨也」
「いや、お酒弱いんだねっていう話をね」
「……?新羅と門田か?」
「……うん、まぁいいや」
自覚症状が無いらしいと分かって、もう浮かんでくるのは苦笑以外有り得なかった。
だが……そういうことなら現状を利用しない手立ては無い。
どうやら素直さが十倍増しくらいになっているようだから、ここはいろいろと質問させてもらう事にしよう。
苦笑を猫の笑みに変えて、臨也は口を開いた。
「ところでさ、うちの双子の事ってどう思う?こないだ会ったよね?」
「あ?突然なんだよ」
「まぁまぁ。何となくだよ、何となく。兄としては気になる所なんだよね」
「……九瑠璃も舞流もお前の妹らしく、ちょっと変だけど……良い奴らだと思うぜ。敵に回さなければ頼りになるんだろうしな」
「んー……ま、会って一回くらいならそんなところかな。……じゃあさ」
と、笑みを深めて続けて問う。
「俺の事は?」
「手前か?手前は……変な奴だな」
「……何それ」
てっきり嫌な奴、だとか殺したい奴、だとか、そういう類の言葉が出てくると思っていたのに。ほんの少し拍子抜けた。
が、それは間違いだったと次の瞬間、知る。
「俺の力を知って、それでも関わるのを止めようとしないなんて、本当に変な奴だよな、手前は。俺が手前を本気で殺そうとしてんのに、死なないなんて本当に変だろ。変で……ほんの少しだけ、救われてる気がする」
「……!?シズちゃん、それってどういう……っ」
気を抜いていた所に落とされた爆弾に必要以上の衝撃を受けつつ、どういうことかと聞き返すべく彼の肩をぐぃと掴んだ、のだけれど。
「……シズちゃん?あれ?もう寝ちゃったの?」
彼はぐっすりと眠っていて、言葉の真意を尋ねる事は最早、出来ようも無かった。
嫌いで嫌いでしょうがない相手なのにまだ壊れてないっていう事実は、ちょっと忌々しくも貴重かななんていう話でした。
でもシズちゃんはお酒はそこそこ飲めそうだから……みたいな続編があります。
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