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女の子がたも好きですよ。ということで、フェルトとクリスティナです。
17.ハート型の
「あ!これ可愛い!」
バーゲンセール中のショッピングセンターにて。
セール品に向かって我先にと手を突き出している集団そっちのけで、クリスティナは色々な形のバッグがあるコーナーに目を釘付けにしていた。
その隣で、フェルトはぼんやりと集団の方を見る。…クリスティナが、あちらへ行こうと言ってくれなくて良かった。あの中に入って無事でいられる自信は……全くと言って良い程に無い。
それにしてもあの人たちは、どうしてあぁも必死になれるのだろう。確かにセールなのだから全部お買い得品であることは間違いない。けれども、だからといってあの集団の中で欲しい物の奪い合いを出来る、という事とそれはイコールにはならない、と思う。
正直、自分には理解できない行動だった。
自分だったら……絶対に近寄らないから。
入れと言われてもきっと断るし、強制されたらきっと命じた相手を放りこもうとか本気で考えるだろう。いつもの自分ならそんな事をしないと分かってはいるけれど、そんな事を思わせるくらいにあの集団は恐ろしかった。
一生あんな集団と関わりを持つ事がありませんように。
心の底からそんな事を祈りつつ、何となく隣に視線をやって…目を少しだけ見開く。
そこには、誰もいなかった。
「……クリスティナ?」
思わず先ほどまでそこにいた人の名前をポツリと、呼んでみる。
その言葉に何の反応も無い事を確認して、フェルトは本格的に困った。返事がないと言う事は本当に傍にいないと言う事で、つまりそれは自分を置いてどこかへ彼女は行ってしまったと言う事。だとしたらどこへ行ったのだと言う話になり、行先を知らない自分は黙って彼女を探す他にない。
出かける前に『新しい服が欲しい』と言っていたから、もしかしたら服の店に行ったのかもしれない。『靴が欲しい』とも言っていたから靴の店に行った可能性もある。もちろん化粧品や菓子の店だって、探しに行くべき店の中には入っているわけで。
数え上げてみると、探さないといけない場所は結構多かった。
「……まずは洋服屋さんかな…」
「何が?」
「…あ」
呟きに返事があって、ほんの少しの驚きを覚える。
それからゆるりと頭を巡らせると、そこには不思議そうなクリスティナの姿があった。
紙袋を抱きかかえるようにして持っていた彼女を見て、あぁ、と納得する。彼女は直ぐに戻るつもりでレジに行っていたらしい。
「…何か買ったの?」
「まーね。可愛いバッグを二つほど」
「二つ……?」
一つではなく二つ、というのは……状況によって使い分けるのだろうか。
どうするのだろうかと首を傾げていると、彼女は苦笑して紙袋をこちらに押し付けるように渡してきた。それでもなおも彼女が紙袋を持っていたのを見て、そこで初めて袋が二つあった事に気づく。
「二つもあってどうするんだろう?とか思ったんでしょ?」
「…うん」
「一つはフェルト用だよ」
「…私の?」
「そうそう。プレゼントってやつかな。可愛いくて丁度二つあったから、お揃いにするのも良いかなーって思ってさ」
「でも…悪いよ」
「良いの良いの!……むしろ貰ってもらわないと私が困るんだよね。同じのを二つ持ってても……ねぇ?」
冗談めかした風に言われて、少しだけ笑む。
つまり、彼女は気にしないでと言っているのだ。気にせず受け取って使って欲しい、と。
その思いを嬉しく思いながら、フェルトは紙袋を素直に受け取った。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
「…どんな形なの?」
「ハートの形だよ。私が赤で、フェルトがピンク。…あ。逆の方が良かった?」
「うぅん…嬉しいからこれで良い」
「喜んでもらえたなら私も嬉しいよ。じゃあ、次は洋服買ってあげる!」
とびっきり可愛いのを選んであげるから!と気合を入れる彼女に対して、自分は、
「…お手柔らかに」
顔に浮かべた笑顔はそのままに、そうとだけ答えた。
こんな風に連れまわしてかまって色々買ってあげてたんだろうなぁ、とか。
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