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太鼓の達人に熱中しすぎてた二人の話ですよ。
「……お前のせいでシズちゃんに置いてかれちゃったんだけど」
「それはこっちのセリフよ」
日付が変わったばかりの池袋の街にて。
あてもなく、臨也は罪歌と共に薄暗い通りを歩いていた。
ゲームセンターでの勝負は決着がつかず、最終的に店じまいと言う事で追い出されたわけだけれど、出来る事ならもっと抵抗すればよかった。妖刀少女(色んな意味で本物)がその際に勝利した事によって引き分けとなり、決着がついていないのである。
明日……いや、今日か。ともかく、別の形で決着を付けなければ…気が治まらない、
しかしそれより先に自分たちを置いて去ってしまった静雄を探しだそうと、今はそれだけの理由で歩き回っているのだった。
当てというものが、全然ないが。
…一度、園原杏里の家に戻って罪歌を押しつけてこようかと思ったけれど、ゲームセンターからちょっと遠くて面倒だったので止めた。それよりも、そこからフラフラ歩き回り探し回った方が簡単だと思ったわけだ。
というわけで、罪歌と二人並んで歩いているのである。
…………凄く嫌なのだけれど。
はぁ、と臨也は息を吐いた。
「何が悲しくてこんな常識外の存在と一緒にいないといけないんだろうね……俺が愛する人間の形をしてるけど、完全に人外だしなぁ…」
「愛しているけれど嫌いで嫌いでしょうがない存在が傍にいるなんて、一体私はどうしたらいいのかしら。愛しても良いのかしら。でも面倒な気もするし…」
当てつけのように呟くと、仕返しのように零された。
む、と眼下の少女を睨みつけると、彼女は憎たらしく鼻で笑ってきた。……どうしよう、殺意がどうしても治まらない。折って良いんだろうかこの鈍ら刀。
というか、どうしてこんなに苛つくんだろう。あぁ、人間じゃないからか。人間でもないくせに人間の格好をしているのが腹立たしいのか。それに、性格とかキャラ被りとか根本的なところもダメかもしれない。
…やっぱり折ろう。
決めて、臨也は隠し持っているナイフに意識を向けた。日本刀のリーチには及ばないが、こちらは日夜繰り広げられる静雄との命がけの鬼ごっこによる経験値が溜まっている。道路標識と比べたらそのくらい、どうということもない。
「…罪歌」
「何?臨也」
声音の変化に気付いたのか、妖刀は歩みを止めた。
それに構わず少しだけ先に進んで、そうしてようやく振り返る。
手にはちゃんとナイフを持って。
「シズちゃんがいないってことは邪魔されないってことだよね」
「そうね。正確に言うと、私が邪魔するような状況に至らないという事だけど」
「ってことは、ここで俺たちが真剣勝負の続きをしたって、」
「誰も、止めに入ってこないでしょうね」
「ならさ」
「…分かるわ。そうしましょう」
腕から出現した刀の柄を握り、罪歌は笑んだ。
「愛してあげる。貴方みたいな人間でも」
「嬉しすぎて反吐が出るよ」
臨也も笑み、地を蹴るべく足に力を込め。
「…で、池袋最強をボコる計画ってどんなのなんだよ」
すぐ傍の路地の…奥から聞こえてきた言葉に思わず固まった。
思わずなのか、きょとんとした表情を浮かべた罪歌と顔を見合わせ、二人してこそりと声の聞こえてきた路地の方へそろりと近寄る。
「簡単な話だって。人質取るんだよ。昨日と今日でよ、ゲーセンとかで来良の生徒と一緒にいるの見たって奴がたくさんいるんだ。しかも女子生徒」
「マジで!?」
すると、声が先ほどよりクリアに聞こえてくる。夜、という時間帯に人の気配も車の存在も無いこの場所での普通の会話は、大声でそれを触れて回っているのと全く同じ意味合いを持っていた。しかし自分たちは雰囲気的に普通よりも少し小さな声で話していたから、彼らには声が届いてなかったらしい。故に、こちらの存在に気づかない彼らの会話は続く。
それは彼らにとって不運であったが、自分たちにとって幸運というわけでもなかった。
何せ、人質なんてみみっちい事をこんな真剣な声音で話している相手に、あの池袋最強が屈するわけがない。というか、彼らはもっと平和島静雄という存在について知るべきだ。彼に対する挑発は、人質込みでの死亡と同義語なのだと。
というわけで、何をすることもなく彼らはその内に地に伏すだろう。
だが。
「…暇つぶしには、丁度いいかな?」
「えぇ。それは良いアイディアだわ」
「それなら、とりあえず一時休戦って事かな」
「あの命知らずに命の大切さを教えましょう」
「それと…もちろん」
「愛も、でしょう?」
互いにそう言って、顔を見合せて笑った。
多分、見た人が一人残らず逃げていくような感じで。
獰猛な笑みとかそういうもんじゃない怖い笑みだと思ってください(最後)。
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