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三巻後の正臣と沙樹ちゃんのお話。



「ねぇ、正臣は私のどこが好きなの?」
 正臣の隣を歩きながら、沙樹が零すように呟いた。
 それは何度も何度も繰り返された問いであり、正臣は肩を揺らす事も無く、軽い伸びをしながら口を開く。
「……さぁな。好きだから好きなんじゃないか?」
「それじゃあ理由になってないよ。好きな理由が好きだから、だなんて」
「じゃあ、先は何で俺が好きなわけ?……って、これは前訊いたっけか」
「うん、訊かれたね」
 こくりと沙樹は頷いた。
 その時は、変な所に素直な場所が良いだとか、格好いだとか口にしたのを覚えている。実際に沙樹はそのように思っていたし、同時にほんの少しだけそれらは『理由』とは違う様な気分も抱いていた。
 だから、今回は少しだけ言葉を変える。
「でも、今だったら好きだから好き、って答えるよ」
「……おいおいおいおい。それじゃあ俺と一緒じゃねーか」
「一緒だね。でも、それで良いじゃない」
 呆れ顔の正臣に笑顔で答えて、沙樹は言う。
「理由なんて無くて良いんだよ。好きだから好き、それで良いの」
「さっきと言ってる事違うぞ?」
「うん」
「うん、ってお前なぁ……いや、ま、それも良いかもな」
 に、と笑って正臣は続けた。
「人を好きになるってのは理屈じゃないって言ってるみたいで、案外格好いいし」
「だねぇ。あ、あと、理屈じゃない気持ちって、何か簡単には消えない気がするよね」
「お、確かに。ってことは、俺たちはあれか?とんでもなく頑丈な赤い糸で結ばれてんのか?何コレ、デスティニーってやつ?」
「きっとそうだよ。あ……でもさ」
「ん?」
 首を傾げる正臣に、沙樹は言った。
「きっと私たち、糸じゃなくて鎖で繋がれるんじゃないかな」
 





過去と言う神様によって、赤い糸は赤い鎖になりました、というお話。
もうあの二人、離れないんだろうなぁとか思ったんですよね。 

 
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