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はっきり言うと、オールキャラの桃太郎パロです。いつもより長いよ!



 昔々ある所に、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。
 ある日、おじいさんはカタギじゃない人の所へ治療に、おばあさんは合法的ではない物品の移送に行っておりました。
 おばあさんが黒バイクで街の道を走っておりますと、見慣れない物が、幾つもある田んぼの一つの中にあるのに気付きました。
 何だろうとそちらへ向かうと、それは段ボール箱でした。
 落とし物かもしれないと思ったおばあさんは、それを家に持ち帰る事にしました。そのまま放っていたら、泥棒が勝手に持って行ってしまうと考えたのです。
 そうして帰ったおばあさんを、先に帰っていたおじいさんは明るく出迎えました。
「お帰りセルティ、遅かったね。……あれ?その箱はどうしたの?」
『分からないんだ。田んぼの中にぽつんと置かれていて……忘れものかと思って、持って帰ったんだけど』
「忘れものだと思うなら交番に届けた方が良かったんじゃないかな?」
『……新羅、忘れたのか!?今、あの交番にはあの白バイがいるんだぞ!?怖くて行けるわけが無いだろう!』
「そういえばそうだったね……そんなに怖いの?その白バイ」
『怖いさ!あれより怖い物なんてこの世界のどこにだって存在しないよ。……それよりこの段ボール箱だけど、中、何が入ってるんだろ』
「え……ガムテープが張ってある時点でもしかしてって思ったけど…確認してないの?」
『……うん』
 少し書き辛そうに紙にそう書いた後、おばあさんは新しい紙をとりました。
『中身、確認した方が良いかな?』
「確認……するべきだろうね。今すぐに危険につながる様なものではないと思うけれど、とんでもない物である可能性は十分にあるんだから」
 おじいさんは頷いて、段ボール箱に張ってあったガムテープをベリベリと剥がして行きました。
 そして開けた箱の中にあったものをみて、おじいさんとおばあさんは固まりました。
「……人?」
 おじいさんの言う通り、中には人間が入っていたのです。
 しかも、赤ん坊の。
 
 
 
 おじいさんとおばあさんに拾われた赤ん坊は田中太郎と名付けられました。田んぼの中に置かれていた段ボールに入っていたから『田中』です。決しておじいさんとおばあさんの苗字がそれであるわけではありません。というか『田中』まで含めて一つの名前です。
 田中太郎はすくすくと育ち、今では街の中で一番二番を争うような、もやしっ子になっていました。
 それを見て、このままでは色々とまずいと思い、そろそろおばあさんと二人っきりの時間が再び欲しいなぁなんて思ったおじいさんは田中太郎にある日、こう言いました。
「そういえば紀田君、っていたよね。紀田正臣君。ほら、仲が良かったけれどご両親の都合で遠くに引っ越して言っちゃった子。……たまには、直に会ってきたらどうかな?」
 おじいさんの言葉に、田中太郎は頷きました。
 チャットでずっと交流を絶やさずにいた親友に、直に会うと言うのはとても魅力的な事ではないかと思ったのです。
 おじいさんの企みと本心に気付かないまま、田中太郎は親友が住んでいる鬼ヶ島へと行くことにしました。
 同じくおじいさんの本音に気付かないおばあさんは、田中太郎を心配しながらも、親友へのお土産としてきび団子を持たせました。ただし味覚の無いおばあさんの手作りだったので、ほんの少し普通のきび団子より、それは甘辛しょっぱい味でした。
 そうとも知らずに田中太郎はそれを受け取り、お礼を言って家を出ました。
 
 
 
 しばらく歩くと、田中太郎は一人の犬に遭遇しました。
 その犬は道の真ん中に倒れていて、どうやら、何かを小声で呟いているようでした。
 どうしたのだろうと近づくと、犬の声が聞こえるようになりました。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」
 それを聞かなかった事にしようと決めて、田中太郎は犬の傍を素通りしようとしました。
 丁度その時、腹の虫が無く音が聞こえました。
 もちろん、田中太郎の物ではありません。
 誰の物だろうと首を傾げながら、田中太郎は何気なく視線を下に向けました。
「えっと……きび団子持ってるんですけど、よかったら食べます?」
 そして見えた赤い耳に、思わず笑みを浮かべました。
 
「あぁ、お前、セルティの知り合いか」
 甘辛しょっぱい味のきび団子を一つ食べた後に犬は言いました。
 彼はシズオと名乗りました。なんでも、おばあさんの友達で、おじいさんの知り合いだと言う事らしく、どうやら悪い人(犬?)ではないようだと田中太郎は安堵しました。
「はい。田んぼに捨てられていたのを拾ってもらったんです」
「そうか……そりゃ災難だったな。それで、お前は何でこんな所にいんだ?」
「引っ越して行った親友に会いに、鬼ヶ島に行こうと思って」
「鬼ヶ島?随分と遠い所に行くんだな……危なくねぇか?」
「そうですね……ちょっと、危ないかもしれません」
 思い当たる節があったので、田中太郎は頷きました。
 最近、この辺りではカラーギャングという物が活性化していました。それはどうやら鬼ヶ島でも同じであるらしく、実はそれも今回の鬼ヶ島行きの旅を決定させる大きな理由になっていました。長く会っていなかった友達の安否が心配になったのです。
 そう伝えると、犬は少し考えるそぶりを見せてから言いました。
「俺もついてってやろうか?」
「え?」
「一人じゃ危ないだろ」
「でもそんな、悪いですよ……」
「セルティの……一応、身内なんだろ?そんな奴を放っておくわけにはいかねぇよ」
「シズオさん……」
 良い人(犬)だ、と田中太郎は思いました。
「……ありがとうございます」
 そして、その好意を素直に受け取る事にしました。
 
 
 
 田中太郎と犬が揃って道を進んでいると、一人の猿に出会いました。
「お、カドタじゃねーか」
「シズオ……?と、そっちは誰だ?」
 どうやら猿は犬と知り合いらしく、そんな犬の傍にいた田中太郎に少しばかり興味を抱いたようでした。
 悪い人(猿)ではなさそうでしたので、田中太郎はぺこりとお辞儀をしました。
「はじめまして。田中太郎です」
「こいつ、シンラのとこに住んでるんだとよ」
「ほう……そいつは災難な」
 同情の表情を浮かべた猿に、田中太郎は苦笑しか返せませんでした。『災難』の心当たりが多すぎて、反論が一つも浮かばなかったのです。
 良い人なんだけどなぁ、と田中太郎が思っている間に、犬は猿に事情のすべてを説明したらしく、猿は酷く難しそうな表情を浮かべていました。
「鬼ヶ島、な……知ってるか?今、あっちには黄巾賊っつーカラーギャングが出来てるらしい」
「黄巾賊……ですか」
「あぁ。目的は……悪いな、良く知らねぇんだが、規模も実力もそこそこあるらしい、舐めてはかかれねえ連中だ。……それでも行くのか?」
「はい」
 猿の問いに、田中太郎は頷きました。そんな事を聞かされては、なおさら鬼ヶ島へ向かわなければなりません。親友が心配です。
 田中太郎の意思が変わらないと分かったのか、猿はため息をつきました。
「……仕方ねぇ。不安だから俺もついて行く」
 こうして猿が仲間に加わりました。
 
 
 
「あっれぇ?その子誰?」
 その声は、上から降ってきました。
 何だろうと田中太郎が顔を上げると、ブロック塀の上に一人の雉が経っているのが見えました。
 とん、と音を鳴らしながら地面に降りた雉は、人を舐め切った笑みを浮かべて言います。
「もしかしてシズちゃん、食費が無いからってついに誘拐でもしちゃったの?きゃー!こわーい!みなさーん!ここに犯罪者がいますよー!」
「……俺は誘拐なんてしてねぇし食費がねぇのは手前が俺の財布を勝手に盗ってったせいだろうが!あとその喋り方鬱陶しいから止めやがれ!」
「あ、シズちゃん苛々してるぅ!きゃはっ!頑張ってネカマ口調にしたかいがあったね!じゃ、そう言う事でさようなら!」
「待ちやがれッ!」
 走り去る雉の後を、犬は猛スピードで追いかけ始めました。
 その様を見て、田中太郎は唖然としていました。あまりの展開の速さに思考が付いて行かなかったのです。
 それでもどうにか、最初に見た時の犬の呪詛の様な殺すという言葉は全て雉に向かっていたのだろうかとか、雉の人楽しそうだったなぁとか、考え始めた頃に、一つ気になる事が出てきました。雉の口調です。
 雉のあの喋り方は、田中太郎がチャットで知り合ったとある人物と一緒である様な気がして、何となく首を傾げました。
「もしかしてあの人が甘楽さんなのかな……」
「どうした?」
「いえ、一人事なんで気にしないでください……ところでカドタさん、あの二人って?」
「あぁ……昔っから仲が悪くてな。顔を合わせるたびにいつも殺し合いの喧嘩をしてんだ」
「殺し合…っ!?」
「まぁ、死人が出てるわけじゃねぇから良いだろ」
 どこか諦めをにじませた顔で息を吐き、猿はそれより、と言いました。
「アイツらが走って行った方向に、鬼ヶ島行きの船が出る港があるはずだ。行くぞ」
「あ、はい」
 田中太郎は頷いて、先を歩く猿の背中について行きました。
 
 
 
 田中太郎と猿は、砂浜でばてて倒れていた犬と雉を回収して、丁度港にあった船に乗り込みました。雉を連れていく必要は無いように思えましたが、置いて行っても問題しか起きないだろうと言う猿の言葉に思わず納得して、連れていく事にしたのです。
 もちろんこの場所で何かをされるのは嫌だったので、雉はグルグル巻きにしておきました。当然ですが、犬から盗ったという財布も取り返しました。
「っていうかさぁ、この扱い酷くない?」
「そんな事を言われても……」
「シズオの財布取った上に挑発してる時点で自業自得だろ」
「今殺されねぇだけましだと思いやがれ」
「やれやれだね……っていうか、この船ってどこに向かってるの?」
「鬼ヶ島よ」
 答えたのは船長の女性でした。
 彼女は長い髪を風になびかせながら、冷たい視線を雉に向けます。
「そういうわけだから死んでらっしゃい」
「……え、マジなの」
「私が嘘を言う理由が見つからないわ」
「ナミエ、」
「嫌よ。今なら戻るよりも鬼ヶ島に付く方が早いもの。諦めなさい」
「……」
 船長の言葉に黙った雉の傍で、田中太郎と猿は顔を見合わせました。
「……どういうことですか?」
「俺も知らないんだが……そっちの船長さんは知ってるようだな」
「えぇ。知ってるわよ」
 腕組みをして、船長は船の壁に背を預けました。
「そこに転がされてるのが色々としたのがそもそもの始まり。鬼ヶ島にはこいつに仕返しをしたい奴が集ったの。まぁ、つまり、鬼ヶ島に出来た黄巾賊って言うカラーギャングは、イザヤを埋めようっていう人たちの集団と言う事」
「……へぇ、そうなんですか」
「それにしてもコイツ、そこまで恨み買ってたのか……」
「…?っつーことは、何だ?こいつを鬼ヶ島に運んだら、それだけでこいつ死ぬのか?」
「確率は跳ね上がるでしょうね」
「よし、なら死んでこい、イザヤ」
「シズちゃん……何か凄い嬉しそうだね……」
 こうして船長の船は驚きと喜びと呆れと逃亡希望を乗せて、鬼ヶ島へ向かいました。
 
 
 
 鬼ヶ島に辿りついた田中太郎は黄巾賊を探す事にしました。親友に遭う前に、とりあえず雉を引き渡そうと考えたのです。
「……君も随分と酷いね」
「自業自得らしいですから」
 頬を引きつらせる雉を引きずる犬と猿と共に、田中太郎は黄色い何かを身につけている人を探しました。船長から教えてもらったのですが、黄巾賊は全員が全員、黄色い何かを身につけているらしいのです。
 出来れば怖くなさそうな人に話しかけたいと、きょろきょろと視線をさまよわせていると、ふいに黄色いスカーフを首に巻いている人に目が止まりました。
 あの人にしようと決めて、田中太郎は近づきました。
「あの……って、あれ!?」
 声をかけられ振り返ったその人の顔を見て、田中太郎は驚きました。
「正臣!?」
「え……お前まさか……!?」
「うわぁ……久しぶり!髪染めてたんだね!結構変わってて気付かなかった!」
「そう言うお前は全然変わってねーな……で、何の用だよ」
「いや、ちょっと会いに来ただけなんだけど……正臣、もしかしなくても黄巾賊……?」
「まぁ、色々とあってな……」
「そっか……なら丁度良かった」
「……?」
「お土産、おばあさんからのきび団子だけだったんだけどね……大物持って来れたよ」
「は?」
 不思議そうな親友に微笑んで、田中太郎は言いました。
「イザヤさん、いるんだけど」
 
 
 
 こうして親友と再会できた田中太郎は、とても楽しい時間を過ごしました。









この後にイザヤさんがどうなったのかはご想像に。
それと、本当は、ほかの人も出したかったんだけどな…。
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