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何故にこうなった。
04:暁の華
そして、それは突然起こった。
「おめぇさんたち何やってるべか!」
その声と共にどこからともなく不思議な装飾が施されている杖が飛んできて、それが幸村の後頭部に直撃したのである。
政宗と戦うことに集中していた彼に、それを避ける術はない。
結果、直撃を許してしまった彼はそのまま俯せに倒れた。見れば頭からドクドクと血が流れているようだが、そのくらいで彼は死なないだろうから問題は皆無だろう。心配する方が馬鹿馬鹿しいくらいに違いないのだ。
戦い合っていた竜でさえそれは思ったようで、幸村の傍らに落ちていた例の杖を手に取り、それを軽く、飛んできたのであろう方向に投げた。
「いつき、これはそーいう使い方する武器じゃねーだろ」
「けんど、そうでもしないと止まらなかったべ」
「……否定はしねぇ」
「出来ないの間違いだべさ」
「…そうかもしれねぇけどな…これじゃ幸村のヤツが憐れじゃねぇか?」
「死んでないから良いだ」
「あぁ、それもそうだな」
「そーゆーもんなのか、オイ」
…絶対違うと思うのだが。
思わずツッコミを入れてしまったのだが、二人はそれを意に介した様子もなく、倒れ伏している幸村を観察したり、つついてみたりしていた。
ちなみに、観察しているのが政宗、つついているのが、いつき。
そんな彼らを眺めつつ、元就がしみじみとした様子で口を開いた。
「ふむ…しかし本当に邪魔が入るとは」
「俺の言った通りじゃねぇか」
「それだけは認めざるを得まいな」
「…お前、何か企んでる?」
「何を失礼な。我が殊勝にも貴様の事を認めておるというのに」
「その態度が怖いんだよ!」
今までの経験上、素直にこうやって元就が元親を認めたことは少ない。少ないどころか、殆ど無いと形容しても良いくらいには無いのだ。
それがどうしてこんな言葉を。
そうやって、疑心暗鬼になってもおかしくはないのであった。
警戒段階を一気に最上級まで引き上げたこちらにはお構いなしに、元就は腰を上げて政宗たちのいる方に向かった。それから、彼が倒れたままの幸村を軽くつま先でつついているのが見えて、幸村に同情する。
やって来て戦って、挙げ句にコレでは不憫すぎる。
「時に童よ、何故そなたがここにおるのだ」
「…?何言ってるだ?この辺りにおらたちの村があるんだべよ?」
「おー、もうそんなトコまで行ってたんか」
「…あれ?なぁ、元就、船って何処においてたっけ」
「少なくともそこまで北ではなかったな。行き過ぎたのであろう」
「船?」
その言葉に、何か反応する物があったらしい。
いつきが首を傾げ、腕を上げた。
「それってあれだべか?」
彼女が指さす方を向けば、そこには確かに船があった。
ただし。
その船は、どこかへと旅立っていく所だったのだが。
「…鬼よ、あれはもしやとは思うのだが」
「例の船だよなー…アイツら、俺たちの事置いて帰るつもりなのかよ」
「貴様の躾が甘かったのであろう、この馬鹿鬼めが」
「はぁ!?何で俺のせいになるんだよ!」
「貴様以外の誰のせいになると言うのだ」
「おめぇさんたち落ち着くだ!」
と、元親と元就の言い合いを止めたのは彼女だった。
いつきは不思議な装飾の例の杖を持って、じぃとこちらを睨み付けていた。
「それ以上言い合うなら、この人みてぇに頭から血を出すことになるべ…?」
「……」
別に、その脅しが有効であったわけではない。避けようと思えばよけれるだろうし、受け止めることも可能だろう。
だが、底知れない気配に思わず動きを止めてしまったのだ。
ふと見れば倒れている幸村が見えるから、もしかしたらそのせいかもしれなかった。
いつきちゃん最強伝説、みたいな…?
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