夢なら消えろと男は叫んだ

何でか、こういう話を書くと臨也の話になってしまうという。

---

　これは夢だ。夢以外の何物でもない。だとしたら目を覚まさなければいけないけれども、あれ、どうして目を覚まさなければいけないんだろうか。目の間に広がっているのは待ちに待った待ち望んだものであるはずなのだから、現実に帰ってそれを手放すと言うのももったいない。目が覚めなくったって別に良いじゃないか。もっと喜ぶべきだ。もっと楽しむべきだ。笑え笑え笑え笑え！俺にはそうする義務と権利があるんだから。義務は全うするべきで、権利は活用するべきだ。だから俺は喜ぶべきで楽しむべきで笑うべきで満足するべきで、天国にいる気分でも味わっておくべきなんだ。

　じゃあ、この気持ち悪さは何なんだ？

 

 

「　　　　　」

 

 

　可笑しい。声が震える。まるで泣き出しそうな声じゃないかと思うくらいに。って、だから何で俺が泣かなきゃいけないんだよ！これじゃあ俺が悲嘆にくれて悲哀を宿しているみたいじゃないか。有り得ない。絶対に有り得ない。有り得ることが有り得ない。こんな事が現実で起こった日には俺は理不尽な程の圧倒的暴力に晒される事もなくなるんだし、世界で一番大嫌いな化け物がいなくなるってんだってことなんだから。利益こそあれ不利益なんてどこにもない。だからこの光景に不満なんて無い。それでも強いて不満を上げるなら、それはこいつが俺の預かり知らない所でこんな目にあっていることだ。化け物のくせにどうしてそんな風になってしまっているのやら。もしかして、弱くなってしまった？受け入れてくれる存在がいると知った瞬間から退化を始めたりしたから？なら、それは弟のせい？上司のせい？妖精のせい？妖刀のせい？少女のせい？後輩のせい？だとしたら全部全部、俺が消してあげるよ。そうすればもう弱くなんてなくなるだろう？俺が嫌いな化け物らしい化け物のままでいてくれるんだろう？こんな姿を俺に見せる事もなくなるだろう？こんな姿を俺が二度と見る事もなくなるだろう？だから、だから。

 

 

 

　早く壊れろ腐れ夢。

 

 

 

―夢なら消えろと男は叫んだ―　　　

（そんな結末なんて認めてやらない）

---

死ね殺すって言い合ってるけど、実際に死んだらどんな顔するんだろうと、結構本気で気にしてます。