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超『IF』展開。イノベとCBが仲良し設定。そんな設定のイノベさんたちのお話です。
11.スニーカー
「気持ちいい所ね……」
「ホントホント。男どももさっさと来ればいいのにねー」
小高い緑の丘の上。
レジャーシートを敷いてその上に腰を下ろしたアニューとヒリングは、二人並んで空を見上げていた。視線の先に広がる色は穏やかな青色。所々に白い雲もあったけれども、それらは決して太陽の光を邪魔しようとはしなかった。
遮るものも無く降り注いでくる日の光を浴びながら、そよそよと吹いてくる風が風邪で遊んで行くのを感じながら、静かに目を閉じる。
地球には、探せばこんなに素敵な場所があるのだ。開発された都市が嫌いだと言うわけではないけれど、こんな所が残っていてもいいとも思う。人々は今や地球の資源を奪い尽くす必要も無く、わざわざ自然を破壊する理由も持たないのだから。そして、もしも場所が無くなったら、宇宙へと向かえば良いのだ。
宇宙は未だ未知の領域だけれども、恐れる事は無い。きっとそれを助けるために、自分たちはこの世界に存在している。
「あと、人間たちのサポートでしょ」
不意に聞こえてきたその言葉に、アニューは目を開いた。
そうして見えたのは、悪戯を仕掛けて楽しんでいる子供の笑みを浮かべた同胞の姿。
「ヒリング、勝手に人の思ってる事……」
「良いじゃない別に。分かっちゃうんだもの」
咎めるように言うと、彼女は楽しそうに笑った。
「だって、私たちはイノベイドなんだからさ」
「それはそうだけど……意識して分からないようにって、する事くらい出来るでしょ?」
「面倒だから、嫌」
「……面白いから嫌の間違いじゃなくて?」
「あ、分かった?ねぇねぇ、アニューも私が考えてる事読んだの?」
「そんな事、読まなくても分かるでしょう」
「ヒリングは分かりやすいからね」
と、アニューの言葉を引き継ぐように紡がれた、少し呆れたその声たち。
それが背後から聞こえてきたと気付いた二人が首を回してそちらを見れば、そこには自分たちと『同じ』彼らが立っていた。
片方は声の通り呆れの表情を、もう片方は優しげな苦笑を浮かべ、自分たちと背中合わせになるように……否、自分と『同じ』彼は背中あわせの状態で、シートの上に座った。ずしり、と、リヴァイヴの重みが程良くアニューの背中にかかる。
「全く……何で僕がハイキングなんかに参加してるんだか」
「リヴァイヴはいつも仕事をし過ぎてるから、たまには休めってアニューに引っ張り出されたんじゃなかったかな?」
「そういう貴方もヒリングに背中を押された口ですよね、リボンズ」
「言っておくけど、僕は君みたいな無駄な抵抗はしなかったよ?」
「リボンズは賢明だもんね。どっかの誰かさんと違って」
首を回すついでに体もくるりと回して、リボンズの背中にべったりとくっついて……ついでなのか首にも手をまわして、ヒリングは挑発するように笑った。
それを見てムッとした表情を浮かべるリヴァイヴを見て、アニューは慌てて彼の手を握った。こんなところに来てまで喧嘩だなんて、そんな事態は何が何でも遠慮したい。……ヒリングとリヴァイヴの相性を考えると、こんなところに来たって喧嘩まがいの事が起こるのは仕方ないと分かってはいるけれども。
そんな自分の思いが伝わったのか彼のトゲトゲとした空気がほんの少し収まる。それを感じてだろう、リボンズがクスクスと笑った。
「相変わらずだね、君たちは。見ていて全然飽きないよ」
「リボンズ、それは褒め言葉じゃありませんよ?」
「最高の褒め言葉のつもりなんだけどな」
「なら言わせてもらいますが、全然嬉しくありません!」
背中越しに聞こえる会話に思わず笑みを浮かべていると、顔だけこちらに向けたヒリングも今度は楽しげに笑っていた。
楽しいと、アニューも心の底から思った。最近はCBの活動を手伝い同胞と彼らとの連絡係を務めている自分だから、同胞たちとこうやって一緒にいられる時間は今の自分にとって本当に貴重なもので。……だから尚更楽しいと感じるのかもしれない。
「あ、そうそう。そういえばね、アニューがティエリアも連れて帰って来たからさ、リジェネがすっごい喜んでたわよ。……ティエリアがCBに帰るまでずっとべったりくっついてるつもりと見たわ」
「今のヒリングみたいに?」
「今の私以上に」
「それは……有り得そう」
「でしょ?」
そう言って笑いあった頃、話題に上がっていた二人と、ブリング、デヴァインの声が少しだけ聞こえてきた。耳に届いたそれらに、顔を見合わせまた笑う。
イノベイドがみんな集まって、久しぶりに再会して。
今日は、本当に楽しい日だ。
こんなラストは到底ありえないわけですけれど。
まぁ、たまにはこういう話も良いかな、なんて。
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