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久々、うわさマスター臨也です。今回は一方その頃なお話です。
新宿の、臨也の拠点にて。
波江は来客のために淹れたコーヒーの入ったカップ……ではなくて、何故か置いてあった誰も飲みそうにないイチゴ牛乳のパック(ストロー刺し済み)をその尋ね人の前に置いた。
「貴方がここに来るなんて珍しいわね。何かあったの?」
「何かあったっつーか、人助けっつーか……天の声の指示っつーか」
「天の声?」
「漫画とかの吹き出しじゃない、四角い枠に書かれてるあれみたいなもん」
「ナレーションみたいなものかしらね……」
静雄が言いたがっているであろう事を漠然と理解して、自分用のコーヒーと共に彼の正面の席に座る。
彼がここを訪れたのは十分程度前の事。自分の雇い主を今日こそ殺しに来たのかと思えばどうやらそういう様向きで訪れたわけではないらしく、では何だと思いながらも害は無いだろうと中へ通したのが五分くらい前の話だったか。
それから数分かけて飲み物を探し、最中こそりと臨也に連絡を入れてみたが携帯はうんともすんとも言わなかった。もしかしたら何か厄介事に巻き込まれたのかもしれないが、だからといって心配してやる義理はこれっぽッチも無い。連絡がつかないのならばそれでも良いと、『誠心誠意』を持って彼の仇敵の相手をさせてもらおうとコーヒーを入れ、いちご牛乳を手に取り持ってきて今に至る。
正直、自分としてはあの首さえ見つからなければそれで良いのだ。たとえ窓ガラスが割れようと、机が真っ二つに叩き折られようと、蔵書の殆どが引き裂かれようと、玄関がひしゃげようと、階段の途中にぽっかり穴があこうと、首が自分の目の届く場所にあるのならばそれで良い。
玄関前に彼を待たしている間に首を隠した辺りにちらりと視線をやって、紙パックのいちご牛乳をキュイキュイと飲んでいる池袋最強に視線を戻す。
……どうしてキュイキュイ鳴るんだろうか。
初めて耳にする擬音語に珍しい事に並々ならぬ興味が湧いたが、今はそれを追求する時ではない。気付かれない程度に首を振って、話を切り出す事にする。
「天の声とやらは、一体何を言ったのかしら」
「臨也がR団に絡まれてるから代わりに俺にこっちに行けって」
「R団……?」
「『ろっちー団』の略」
「あぁ、『ろ』のRね」
しかし『ろっちー』とは一体誰なのだろう。
全く覚えの無い単語に首を傾げながら、まぁどうでも良いかと判断して、その事には一切触れない事にした。……あるいは『誰』などではないのかもしれないが、それこそどうだっていい話である。
「つまり貴方は折原臨也の代わり、と言う事なのかしら」
「……不本意だけどな」
どこか不機嫌そうに静雄はそう良い、とん、と紙パックをテーブルの上に置いた。
それから腕を組み、眉間にしわを寄せながらも紙一重で暴れ出す事は抑えているのであろう彼は、結局完全には耐えきれなかったようで唸り声を上げた。
「人助けじゃなかったら何で俺がこんな真似……」
「人助けなの?天助けじゃなくて」
「……そっちの方が正しいかもな」
「ふぅん。……私は何をしたらいいのかしら?」
「っと……確か」
先ほどまでの苛立ちが少し収まった状態で、彼は言う。
「確か、臨也に対して負けを認めて、その証に何かやれって」
「……負けを認める?何?勝負事なの?」
「良く分からねぇけど、アンタを含めて八人くらいに同じことを繰り返さねーと、っていう話らしい。天の声がそう言ってる」
「言ってるって、現在進行形なのね……」
天の声というのが自分の思った通り、ナレーションみたいなものだとしたら……普通は登場人物サイドの自分たちには聞こえないのではないのだろうか。
僅かに眉を寄せ波江は……やはり、気にしない事にした。
ツッコミ所は多いが、ツッコミを入れ続けていてはキリが無い気がする。それに相手はどこぞのデュラハンと簡単に友達になれるような存在で、罪歌の子供たち数ダースを帰り討てる程度の存在だ。そういう事が出来てもおかしくは無い様な気もする。
要は、諦めた方が良い事も世の中にはたくさんあふれかえっていると言う事。
はぁ、と息を吐いて波江は立ち上がった。
「何が良いのかしら。非消耗品?私だと分かりそうなものが良いのかしらね……ボールペンじゃダメかしら。ネブラ製の」
「ネブラって何だ?」
「会社の名前よ。それで、良いの?ダメなの?」
「……別にそれでも良いと思うけどよ」
「じゃあ、はい。これ」
テーブルの上にあった一本のボールペンを手に取り、差し出す。
それを受け取った静雄ははてと首を傾げた。
「……?何か見覚えがある様なないような」
「どっちなの。あぁ、それと、」
「ん?」
ボールペンを左手に、イチゴ牛乳を右手に持ち、ストローを加えたまま立ち上がろうとする静雄に、波江は静かに言った。
「家から出るならそれ、飲み終えてから行きなさい」
この同時刻、多分臨也はえらい事になってる。だって九瑠璃に舞流+ろっちーですから。
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