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途美学園的な刹那とアレルヤです。
12.使いかけの
「あ、名前が書いてある」
「何と書いてあるんだ?」
「ちょっと待ってね……何か、かすれて読み難くなってる」
刹那とアレルヤが、その白い箱を見つけたのは本当に偶然だった。
植え込みの陰に隠れるようにちょこんと存在していた、白くて平べったい箱。
何なのだろうと蓋を取ってみれば、見えたのは何本ものチューブ。それを見て、ようやく刹那はそれが絵具セットだという事に気がついたのだった。
使いかけの、しかも見えにくい場所にあった、名前がかすれて読みにくいそれ。
多分、誰かの落とし物、あるいは忘れ物なのだろう。しかし、だからといって返しに行くのもどうだろうと思うのだが。見た所、置き去りにしてから随分と時間が立っている様だし、今更こんな物が返ってきた所で相手を困らせるのがオチだろう。
生徒会に持って帰って適当に使おうか。そんな事をつらつらと思っていた刹那の耳に、突然アレルヤの大声が突き刺さった。
「あ!これ、ティエリアのだ!」
「突然大きな声を出すな………………ティエリア?」
「うん!『ティエリア・アーデ』って書いてある!」
耳をふさぎ呻くこちらに気づいていないらしい彼は、興奮冷めやらぬ様子で箱を持ち上げ驚きと嬉しさを混ぜ合わせたような表情を浮かべた。
「へぇ……ティエリアも、忘れ物とかするんだ」
「一年か二年の時の忘れ物だろうが……確かに貴重ではあるな」
「これ、返したらどんな反応されるだろうね」
最早アレルヤの中では、この発見物を持ち主に返すのは決定事項になっているらしい。
刹那の方でも、相手がティエリアだと聞いた瞬間に、先ほど思った事は綺麗に脳内から消えてなくなっていた。そう関わり合いになる事も無い一般生徒が相手ならば、気にせず職員室に落とし物として預けようと思っていたのだが……生徒会長相手ならば、そんな事をしてやる必要も無いだろう。
「じゃあ、生徒会室に行こっか」
「あぁ、そうだな」
アレルヤの言葉に頷いて、刹那はとっとと生徒会室に行こうと思った
ティエだって忘れ物するさ。みたいな話でした。
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