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幼稚園児と保護者なんだから、一緒にお風呂に入ったって不思議ではない…はずですよね?
「嫌」
その言葉に対して。
雲雀は生憎と、その一言以外に返す言葉を知らなかった。
短い拒絶を耳にしたせいなのだろうか、石の様に固まってしまった義父を腕を組んで眺めて、ふぃ、とそっぽを向く。
「とにかく嫌だからね」
「……そんな事言わないで一緒に入ってくれたっていいじゃないですか」
石から人間へと戻った骸は、少し不満そうに言葉を続けた。
「素直で可愛い僕の凪は、直ぐにOKくれましたよ?」
「……凪、ダメだよ。こんな変態南国植物の言う事を聞いたら」
「恭弥……?何言ってるんですか……?」
「……うん、わかった……きょうにいさん」
「え、ちょ……凪!?」
先ほどから絶叫ばかりで喧しい義父は完全に視界からシャットアウトして、雲雀は凪の手を引いて彼の傍をすり抜けた。
そのまま歩いて行く自分の姿に訝しさでも覚えたのだろうか、不思議そうな表情を浮かべた骸がくるりと振り向いた。
「どこへ行くんですか?」
「お風呂だよ。時計見れば分かるでしょ」
「……あれ、さっき、でも僕と一緒に行くの拒否しませんでしたっけ」
「うん、それは本当に嫌」
念のため、立ち止まってもう一度こちらの意思を伝える様に頷くと、骸の表情の中に哀愁の様な物が混じった……気がしたのだが、別にそんなの自分には関係ないから気にしない事にする。どうせ気にしたってキリがない事でもあるし。
だいたい、こんなやり取りはしょっちゅうの事なのだ。基本的に骸の提案を雲雀が蹴り飛ばし、凪が巻き込まれかけると足では無くて手が出る。それでも懲りなければ、最終的にはトンファーが出てくる。人に話せばそれは普通ではないと言われる事が多々あるけれど、残念なのかは知らないが、これが『六道さんち』の普通だったりするのだ。
と、そういうわけなので。
今回も普通に、いつも通りに、雲雀は骸に冷たい言葉を吐くのである。
「骸、後で僕と凪のパジャマを脱衣所に持って来ててね。タオルも忘れずに。……途中で勝手に入り込もうとしたら咬み殺すから」
「何でなんですか……幼稚園児の子供と一緒にお風呂に入ろうとして、一体何が悪いって言うんですか!?まだ大丈夫でしょう!?凪なんてまだ年少ですよ!?」
だから今の内に一緒に入っておこうと言う事か。
どれだけ自分の子供たち(自分も含まれているらしい……厄介な事に)の事が大好きなのだと呆れながら、とりあえず諦めてもらおうと適当につらつらと言葉を零す。
「親離れの時期なんじゃない?」
「早すぎます!」
「じゃあ、子離れ」
「僕の中のそんな物、遠い昔に桜の根元に埋めてきました!」
「なら、一生ものの反抗期。いい加減に諦めてくれる?」
「……恭弥、今更ですが……その語彙力、本当に幼稚園児のですか……?もしよかったら外国行きます?飛び級出来るんじゃないですか……?」
「飛び級?興味無いよ」
そんなことしたって面白くも何にも無いと鼻で笑うと、骸は何とも言えない呆れの表情を浮かべた。未だ自分に手を掴まれている凪は、何が何だか分かっていないような、きょとんとした表情を浮かべている。義妹には飛び級だとか、それと外国の関係だとか、そういう話は分からないらしい。当然だと思うけれども。
首を傾げている彼女に何でも無いのだと微笑んで見せてから、雲雀は冷たい視線を骸に向けた。勿論、その時には既に笑顔なんて顔には無い。
「ちなみに、飛び級なんてさせようとしたら家出するよ、僕」
「分かりました絶対させません」
「……即答だね」
てっきり、笑顔を消した事に対して拗ねた言動でも返してくると思っていたのに。
真面目な顔の真面目な骸に肩すかしをくらった気分になりながら、何でも無いような表情を浮かべて雲雀は再び歩き出した。
「……ねぇ、きょうにいさん」
「何?」
そうして脱衣所に就いた頃。
おずおずと口を開いた凪に、雲雀は静かに続きを促した。
「……あのね、おとうさんも、いっしょにはいってもいいと……おもうの」
「……」
彼女も、さっきの骸の反応に何か思う所があったのかもしれない。ちょっとだけいつものテンションと違っていたから。
そんな事を思いながら、雲雀は床に座った。
「きょうにいさん?」
「……一緒に入ってもいい、んでしょ。なら、待たないと」
「……!うん!」
問いかけにそう答えると、義妹は嬉しそうに笑った。
ある意味、絆されちゃった雲雀くんでした。
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