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小学校な平和島兄弟です。
025:命
家に帰る途中で、巣から落ちた小鳥を見つけた。
小鳥は上を見上げて、ぴぃぴぃとないている。羽を動かす事も無く、ぴぃぴぃと。鳴いている。泣いている。頭上の巣にいる兄弟たちのさえずりを見上げながら、あの場所に帰りたいのだと、ないている。
そして、全身でないている小鳥を前にして、何事も無かったかのように立ち去る事は残念ながら自分には出来そうになかった。
巣に戻してやろうと思ったけれど、小鳥よりも大きな自分でも見上げて手を伸ばし、背伸びをしても小鳥が降ってきた場所に手は届きそうにない。大人が、傍にいれば良かったのだけれど。けれども時間帯のせいだろうか、周りには自分たち以外の姿は見当たらない。
こう言う時、どうしたらいいのだろう。巣に手は届かないし、届きそうな人はいないし、だからといって小鳥を投げ上げるわけにもいかない。
と、そんな風に悩んでいると、ふいに、くいくいと服の裾が引っ張られた。
誰だろうと考える必要は無い。ここにいるのは自分と弟だけ。だから自分が思ったのは、何で裾を引っ張られたのだろうと言う事。
問いを視線の中に含ませながら弟の方を向くと、弟はいつもの様にこちらを見て、いつもの様に静かな口調で言った。
「肩車、したらどうかな」
「肩車?」
「うん。そうしたら、多分、届くよ。あそこに足台になりそうなブロックがあるし」
そう告げられて、自分と弟と、ブロックと、小鳥と巣を見て、頷く。確かに、自分と弟とブロックがあったら、小鳥を巣に戻してやる事くらいはできそうだった。
「じゃあ、お前が小鳥持ってくれるか?」
「兄さんが肩車してくれるんだね」
「まぁな」
小鳥は小さくて、弱くて、脆くて、怖い。だからそちらは弟に任せてしまおう、だなんて、随分と臆病な話だとは思うけれども。でも、そんな役割分担が一番良いと思うから、ここは弟に任せてしまおう。
「それに、お前に俺を肩車させるって、絶対おかしいし」
「……うん、分かった」
そんな思いを知ってか知らずか、弟は素直にこくりと頷いた。
小さな命に、ちょっとだけ恐怖を覚えているシズちゃんのお話でした。
きっと、壊れそうな壊しそうなそれが怖かったと思うので。
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