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時間っていうのは最大の難所ですよね。なんて。
そんな感じのザン様とマモです。
087:境界線
隔てる物など、もう何も無いはずなのに。
何故だろうか。手を伸ばせば、確かに届くと言うのに。
見えない壁がある様な、そんな気分になるのは一体どうしてだ。
「それは時間のせいじゃないの?」
小さな両手で白いティーカップを持って、呪われた赤子は言う。
まるで心の中を見通した……否、見通していないのならば出てくるはずもない言葉を紡いだ小さな赤子。それをちらりと一瞥して、再び書類に視線を戻す。けれども、話しかけられる前と同様に、真剣にそれを眺めようと言う気には不思議となれなかった。
疲れているのだろうか。そんな風に思いながら、しかし赤子と目を合わせる事な何となく嫌で、そうしないためにと視線は紙に向けたまま沈黙を守る。
こちらの気持など手に取るように分かるのか、大人びた赤子は息を吐いた。
「確かに氷の壁は無くなったし、手を伸ばせば捕まえることも可能だろうだけれど、どうしても『今』に対する認識には差異が出ちゃうんだろうね。八年って、長いから」
「……」
「それは悪いことじゃないんだろうけれど、困ったことではあると思うよ。分かっていたってどうしようもないんだから。そのせいで違和感を感じてしまうのも無理はない」
こちらが黙っているせいか、赤子は止まることなく言葉を紡ぐ。
ふっと、黙れと言えば止まるだろうかと思い、恐らく黙るだろうと結論付ける。
しかし、自分は何も言っていない。
だから赤子はそのまま続けた。
「でも、違和感のせいで躊躇いを覚えるなら、その認識の差異というものをどうにかしなきゃいけないね。そしてこの場合、歩み寄るべきは僕らじゃ無くて、置き去りにされてしまったボスの方だ。だからまぁ、嫌だと思うなら頑張って。僕も多少なりとも応援させてもらうから。勿論、無償だよ」
「……テメェにしては珍しい態度だな」
「まぁね。僕も柄じゃ無いとは思ってる」
ぼそりと告げた言葉には、自嘲気味の笑い声が返ってきた。
八年のブランクを埋めるのって大変でしょうね。頑張ったんだろうかな…。
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