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普通は見えないんじゃないかなぁ……的な方々と、浅井夫婦のお話です。
085:あなたに見えますか?
それを見かけたのは本当に偶然だった。
……だから思う。
そんな偶然、本当に要らなかった。
「……市」
「あ……長政様。……こんばんは」
「う……うむ」
「どうしたんですか……?眠れなかったんですか……?」
「いや……」
眠れなかったのではなく、目が覚めたのだが。
けれども、そんな些細な事を訂正しようと言う心の余裕が今の長政には全く無かった。
と、いうのも。
「して……市よ」
「……何、ですか?」
「先ほど、何者かと話していたようだが……」
「何者かって……この子の事?」
首を傾げて市は、あろうことか何もいない空間を指し示して首を傾げた。
それはまるで悪い冗談のようにも思えるのだが、眼前にある妻の顔は嘘を吐いている顔ではない。そして、それが演技ではないと判断できるくらいには、自分も彼女と時を過ごしていると多少は自負しているわけであって。
つまり、そこに見えない何かが『いる』、というわけであり。
思わず、足を半歩引く。
それを見とがめたのか、市の表情に不可解さがじわりと滲み出て……数秒後、それの代わりに理解の色が浮かんだ。
「あぁ……もしかして、長政様、」
その先を聞きたくないと、わりと本気で長政は思ったのだが。
市の声は、するりと耳に入ってきた。
「この子の事……見えないの?」
……その後の記憶は、朝、自室で目が覚める瞬間までぽっかりと開いていた。
プチホラー。そして長政様ドンマイ。
市は幽霊的な子と仲良くしてると思うのです。
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