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病っていうか、風邪。時期的にそろそろ季節も変わりましょうから、体調にはお気をつけてという事で。
六道さんのおうちのお話です。



021:病
 
 
 
「人には体調に気を付けろだの季節の変わり目は気を付けろだの言ってたくせに、自分はそんな風になるのってどうなんだろうね。咬み殺したいんだけど」
「……恭弥……風邪引いて弱ってる義父にも容赦なしですか」
 げほ、と咳き込みながら苦笑交じりに零された言葉に対して、雲雀はふいとそっぽを向いて温度計を差し出した。
「とにかく早く良くなってくれないと困るから、看病ぐらいはしてあげる」
 その言葉のせいか、寝ている骸の気配が少し揺れたのを感じた。驚いているらしい。
 普段の彼に対する自分の態度を思い返せば彼のそんな反応も理解出来る。けれども、看病してやろうというのにその反応は無いだろう……折角人が妹に感化されたとはいえ、珍しくもやる気になっていると言うのに。
 どうしよう、今すぐコップの中にある水を義父の顔にぶちまけて部屋から立ち去るべきだろうか。それとも粉薬を一回分では無くて十回分くらい彼の口の中に詰め込んで立ち去るべきなのだろうか。
 今手にある体温計を鼻に突っ込んでやろうかなと無表情ながら思っていると、苦笑を微笑みに変えた骸がその案を実行する前に温度計を手に取った。
 自然、凶器候補が手から離れることになり、雲雀は小さく舌打ちをした。
 それが聞こえたのか、骸が表情を引き攣らせた。
「……何で舌打ちしたんですか?」
「別に」
「別にって……こういう場合、その答えが一番怖いんですよ?」
「あ、そ」
 じゃあもっと怖がっていればいいのに。
 座っていた椅子から飛び降りて、雲雀は今度こそ部屋から出ようとドアの方へ向かった。ちなみに水を彼の顔にかけることも、粉薬を彼の口に詰めることもなく、である。
「おや、もう行ってしまうのですか?」
「凪がお粥、作ってるから。手伝いに行かないと」
「なっ……凪が一人で!?」
「……心配しなくても大丈夫だよ」
 振り返り、がばっ、と勢い良く起き上った彼を視界に入れ、呆れを表情に浮かべる。
「彼女も何だかんだと言って、君の子供なんだから」
 手際も良いし、危ないことにはならないよ。
 そう言い残して、雲雀は部屋を出た。






凪は年中くらいには雲雀と同じくらい喋れるようになる予感。
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