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ハプティーズ超兵機関時代のお話です。全然ほのぼのしてないですよ。
070:箱庭の世界
世界は外に広がっているらしいが、自分たちが知るのはこの狭い機関の中のみ。
自分はこの場所で生まれたが故に。
片割れは外の記憶を失ったが故に。
考えて見ればこれほど不思議な事は無い。
外があるのに外を知らないだなんて。
まぁ、自分は別にそれでもかまわないのだけれど。
それでも、何とはなしに呟いた。
『なぁ、脱走とかしねぇの?』
「……!?」
ぎょっ、と、片割れが驚愕したのを感じたが、構わずに続ける。
『それほど興味はねぇけど、外ってのは広いんだろ?出ちまえばいくらでも隠れようはあるんじゃねぇの?じゃあ、逃げ出せれば俺たちの勝ちだろ』
言いながらも、そんな事は無いと思った。機関の連中は何をしてでも逃げだしたモルモットを見つけ出して処分するだろう。そう思わせるだけの気配は、この建物の中に十分なほど漂っていた。
それでも逃げれば勝ちと口にしたのは、さぁ、何故だろう。自分は外なんてどうでも良いけれど、片割れには外を見せてやってもいいのではないかと思ったからだろうか。
外に出れば機関の連中は追いかけてくるだろう。そうすれば普通は見つかって死ぬ。
けれど、そうはさせまいという決意らしいものが自分の中にあるのを、何となく感じていた。
何をしてでも片割れを守ってやろう。
……それはもしかしたら、弱い彼の中に自分と言う存在が生まれたその日から思っていたことかもしれない。
「でも、それは、」
数十秒の沈黙の後、片割れは苦しげに口を開いた。
「出来ないよ。そもそも、逃げられるわけがない。それに……置いて行くの?」
置いて行く。
それが誰の事を指しているのかなんて嫌になるほど理解していた。
あれが枷か、と思いながら、笑う。
『安心しな。「もしも」の瞬間が訪れりゃ、お前が躊躇っていようとこんな機関から、俺がお前を引きずり出してやるからよ。……ま、お前だって「もしも」の時には何をするか分からねぇけどな。何故か?……だって、お前は俺だろ?』
お前は俺なんだから、俺のやる事をお前は出来るはずだし、やるはずだ。
…そんな感じに笑うハレルヤでした。
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