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笑顔……って、楽しい時に浮かべるのとそうじゃないのがありますよね。苦かったり、危なかったり。
そんな感じの、命がけの鬼ごっこの最中なスクアーロのお話です。
006:笑顔
感じた危険を避けるように少しだけ前かがみになると、頭の上を何かがとんでもない勢いで飛んで行くのを感じた。そして、それが何だったのかは飛んで行ったのが進行方向だったから、直ぐに目に映った。分厚い分厚いハードカバーの書籍である。
……あれが当たったら痛いなんて言葉じゃ済まないのではなかろうか。
そんな風に思いながらも足を止めずにひたすら走り続ける自分に、色々な視線が浴びせられた。それは、またやっているという呆れの視線だったり、巻き込まれるのではないかという恐怖の視線だったり、何が起こっているのか分かっていない唖然とした視線だったりして、その全てにひっそりと潜んでいるのは安心の感情だ。
そう。それは今、こうやって追いかけられているのが自分では無いという安堵。
そう思う気持ちは分かる。誰だってこんな風に追いかけ回されたりしたくは無いだろう。顔の側面をビュン、と風を切って飛んで行った刃物を眺めながら、息を吐く。
いつもより気合が入っているようだけれども……何だ、今日は本気で仕留めにかかる気なのか。このままだと本当に死にかねないのだが。
というか、刃物なんてどこから取り出したのだろう。ちらりと見た所、どうにも今自分たちが行っている『鬼ごっこ』の鬼役が持っている類の刃物ではなかったようなのだが……あぁ、すぐ傍を通りかかった隊員から取り上げたのか。はた迷惑な。
まぁ、仮に投げるものが無くなったら銃が出てきそうなので、そう言う意味では他者から取り上げてでも投げるものを補充してくれる彼の行動には感謝しないといけないのかもしれないが。……一番感謝できる行動があるとしたら、それは今すぐ追いかけっこを止めてくれることなのだが、そこまでは望めないだろう、間違いなく。
と、いうか。
恐らくこの『鬼ごっこ』をしたくなかったのなら、始めからどうにかするしかなかったのだ。例えば、そう。鬼役が……ザンザスが、あまり見たくない類の笑みを浮かべたあの瞬間に雲隠れするだとか。
そして、それが出来なかった自分がこうなるのは、ある意味必然だったのだろう。
文句を言う暇もなく飛んでくる数々の物体を一つずつ確認しながら、スクアーロはげんなりとした表情を浮かべたのだった。
おそらく、追いかけっこを見てベルあたりは楽しそうににやにや笑ってると思うんですが。
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