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久々三人旅です。そして久々過ぎて、何がどうなっていたかいまいち思い出せないという、よくありそうな状況に浸ってます。
05:既視感
勝手に去りゆく船を眺めつつ、政宗がポツリと呟いた。
「つーか、船が行っちまったんなら、俺らも俺らで徒歩旅行続行して良いんじゃねぇ?」
「ふむ……それもそうか」
彼の言葉に、元就は素直に頷く。
自分たちは船に用事……まぁ、とっとと帰れと言いに行こうとしていたのだ。しかしその対象がいなくなってしまったと言うのなら、それはもう、果たすべき用事は無くなってしまったと言う事。
言う通り、旅を始めてしまうべきだろう。
こちらは納得したが、そもそも事情を知らない存在もここにはいたりするわけで。
いつきは、不思議そうに首を傾げた。
「……何だ?おめぇさんたち旅をするんだべか?」
「まーな。ふらふら徒歩旅だとよ」
「へぇ……右目の人がよく許してくれたなー」
「そこは……コイツらが色々やってくれてよ」
「色々?」
「色々。内容聞くか?」
「うーん……次の機会で良いべ」
「そうか?別に今でも良いんだぜ?」
「でも……後が良いんだべ。ゆっくり聞かせて欲しいだ」
「そういう話なら土産話、持って帰るからな。楽しみにしてろよ」
「おう!」
……そんな北国二人組の会話を聞きながら、元就は心の中でほくそ笑んだ。これは随分と都合のいい会話の流れではないか。
何だかんだと言って結構無理矢理に連れて来てしまった感じはあったので、こうやって何らかの『旅の目的』が存在した方がこちらとしてはありがたいと言えば、ありがたい。これなら途中で逃げられるとか、そんな話は無いだろうし。
こう考えると、船着き場より北に来すぎてしまった事はある意味ではあるが、運が良かった事なのかもしれなかった。
政宗の気が代わる前に出発しようと、彼に声をかけようとしたところで、
「あれ?何でアンタらこんな所にいんの?」
不意に、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
佐助の声という、聞き覚えのある声が。
……何でこんな所にいるのだ、という問いは無用だろう。この場に幸村がいるのだから。ちょっとだろうと、考える必要も無いほどに分かる。
が。
「佐助?何でテメェがここにいんだ?」
少しも考えようとしない鬼は、あろうことか無用の問いを口にした。
思わず、その頭を円刀で殴る。
……切りつけなかっただけ、まだ温情を与えていると思う。
「痛っ!?…元就テメェなにしやがんだ!?」
「阿呆か貴様。この場に真田幸村が居るのだから、こやつの目的など目に見えて分かろうが」
「え?幸村?……あ、迎えか」
「遅いわ、馬鹿者が」
ポン、と手を打つ元親に冷たい視線を送ってから、元就は頭から血を流して倒れ伏している幸村の方を指さした。
「忍び、用事はこやつの回収であろう。とっとと回収して帰るが良い」
「そりゃどうも……って、え、旦那何で血が流れてんの!?」
「今更かよ」
政宗は初めに気付け、と言わんばかりの表情を浮かべた。
全くもってその通りである。
「うわ……これ、もしかして頭に何か刺さった?」
「刺さったべ。っていうか刺したべ」
「アンタのせいか……ま、なっちゃったもんは仕方ないねぇ」
ため息を吐いて、佐助は倒れていた幸村の方へ歩み寄り、ひょいとそれを背負った。
「旦那の事は連れて帰るよ。迷惑かけた?」
「いんや、かける前に倒れた」
「……そりゃ何とも言えないねぇ……良かったのやら悪かったのやら。とりあえず、旦那が起きたら、むやみやたらに奥州に行くなって言っとくよ」
じゃ、と手を振って。
佐助は元来たのであろう道を帰って行った。
「……行ったな」
「行ったべ……」
「行ったけどよ……結局、アイツら何だったんだよ」
「知らぬ」
むしろ訊きたいのはこちらだった。
旅続けてたら、また二人ともどこかで出てくるんじゃないかな…。
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