お題：秋桜 13．止まれ

文章じゃない文章にしようとして失敗したようなしてないような、多分失敗したかもしれないお話です。
ほんとはトリニティにしようと思ったのだけど。

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13．止まれ

 

 

 

　そこから先に、行ってはいけません。

　歩き続けていたら、前から声をかけられた。

　何だろうと思って目を凝らして見れば、そこにいたのは誰か知らない人だった。

　懐かしいと思う、誰か知らない男の人だった。

　その人は、悲しげな顔をして懇願するように私を見ていた。

　そこで立ち止まってください。

　その人は、そう言った。

　けれども、私はこう答える。

　そんな事は出来ません。

　だって、私は後ろに下がれないのですから。

　後ろには、最早道は無いのです。

　前にしか、進めません。

　だから進むのです。

　そう言うと、その人はとても哀しそうに笑った。

　でも、それでも、こちらに来て欲しくは無いのです。

　そんな事を言われても、困ります。

　私は眉を寄せて、歩みを再開した。

　その人は、そんな私をただただ見つめるばかり。

　不快、ではなかった。不愉快、でもない。

　ただ、申し訳ないと思った。

　理由は、分からないけれども。

　私は多分、ここに来てはいけなかった。

　それでも、来てしまったのだから仕方ない。

　歩いて、歩いて、彼の隣を通り過ぎる頃。

 

 

「何故ここに来たんだ、“　　”」

 

 

　彼が呟いた言葉に、答えるための言葉は無かった。

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留美と紅龍をイメージして。
多分、あの世とこの世の境目くらいのお話。