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夢って、時として本当に混沌としてたりしませんか。
そんな感じの白辺なお話。W組です。
そんな感じの白辺なお話。W組です。
高校生にもなってテストで零点ってどういうことだろう。
返されたテスト用紙の右端に記された無情な数字を目にして、デスサイズは自身の身体から魂が抜けて行く様を見た様な気がした。
「え……いやいや、嘘だよな?夢とか幻とか走馬灯とかそーゆー系だよな?え、だってマルとか普通にいくつかあるし……あれ……?」
『デスサイズ、名前欄見て。あと走馬灯は全然関係ない』
「……名前欄?」
現実逃避の言葉たちの合間を縫って、す、と差し出された紙に記されていた指示に従って、視線を見たくない点数が書いてある場所の左隣の枠の中を見やる。
見やったが、特に何も無かった。
そして、何も無いのが問題だった。
「…………………うっそだぁ」
手に持っているそれは、まさかの無記名答案用紙だった。
零という数字を見た瞬間に感じた衝撃と、今受けた衝撃には比べようもない程に差があった。ハッキリ言ってしまうと、今回の方が明らかに衝撃が大きい。
それからフラフラと教壇前から自分の席へと戻って、すとん、と腰を落とした。多分、今の自分は周りから見れば真っ白なのだろう。口から魂っぽい何かが出ている様も見れる可能性がある。
……今ならきっと、神様にだって祈れるんじゃないだろうか。お願いだから一瞬……いや、十秒だけ過去の自分に介入させて下さいと縋りながら。一瞬じゃ無理かもしれないけれど、十秒もあれば名前ならどうにか書けるだろう、きっと。
世界が終ると言うなら今日終われ。他の日は認めない。
ちょっと自暴自棄になりながら、デスサイズは机にうつ伏せた。
けれども、それも数秒のこと。
結局、聞こえてきた単語と名前に、折角うつ伏せた顔も上げる事になった
「は?……満点?……誰が?」
「聞こえて無かったのか」
「いや、聞こえたから聞いてるんだけど」
右横から聞こえてきた声に言葉を返して、で?と促す。
「今、誰が、満点を取ったって?」
「いつも赤点ばかりの彼が、満点を取ったんだよ」
今度は左隣から、別の声が聞こえてきた。
思わず彼の方を向くと、彼はどこか同情が多量に含まれている気がする頬笑みを浮かべてこちらを見ていた。その表情が作られたものではないのは見れば分かる。それはつまり、彼の言葉が嘘ではないと言う事。
が、だからと言って素直にはいそうですかと認めてやるわけにはいかなかった。
少ししつこいかもと思いながらも、デスサイズは確認のための問いを投げる。
「………………………冗談でなく?」
「冗談言ってどうするのさ」
すると、見事な程に真っ直ぐ言葉が打ち返されてきた。
ちょっとだけ呆れを含んだその言葉が心に刺さった気がしたが、敢えてその妙なチクチクとした痛みを無視する事にして、返ってきた答案を持って戻ってきた満点取りの彼の方を向く。
「満点ってマジ?」
「オレも驚いているが……本当らしい」
とても信じられないような表情で、彼。
「数学で満点って凄いよね。びっくりだよ」
左隣に座る彼も会話に入ってうんうんと頷き、右隣の彼も若干程度称賛が含有されている視線を彼に向けていた。
『おめでとう』
前に座っていた彼もそう書いた紙を差し出し、少しだけ表情を緩めた。
そんな彼らの様子を見ていると、何だか零点で落ち込んでいた自分が馬鹿みたいだと思えるから不思議だった。無記名答案を見て落ち込むよりも、今は喜ばしい事を素直に言わってあげるべきなのではないかと思える事が、実は結構、嬉しい。
だから、笑みを浮かべて言ってやるのだ。
「ま、おめでと」
その言葉に彼は一回瞬きをして、そっぽを向いた。
「運が良かっただけだ。マルバツ問題だったからな」
「へぇ、運が良……………って、あれ?マルバツ?」
これは確か、数学の答案じゃ無かっただろうか。なのに何でマルとバツ。
思わず零点答案を見下ろして見るけれども、マルもバツも存在しない。
会話の流れについて行けずに頭の上にクエスチョンマークを浮かべているこちらをよそに、彼らの会話は続く。
「そうそう。たまに三角とかも入っててさ。あれも全部分かったんだ?」
「勘だがな」
『勘でもないと分からないよ、あれ』
「そうだな……あぁ、そういえば二重丸もなかったか?」
………。
……。
…。
「……夢って、たまに凄く混沌としてるよなぁ……」
そして自室のベッドの上で目を覚ましたデスサイズは、静かに嘆息したのだった。
マルバツ問題な数学のテスト。実際、一回受けてみたいですねぇ・・・。
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