[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
カテゴリーがカテゴリーなのに、刹那視点。
…これは、ケーキの話です。
07.宿題
「……甘い。甘すぎる」
第一声が、コレというのは如何なる物だろう。
呆れにも似た思いを抱くこちらを気にも留めず、ティエリアは言葉を続ける。
「いくら生クリームを使用しているとはいえ……というよりも、どうして俺がここに着いたときには既に、ショートケーキしか残っていなかった?先ほどアレルヤから聞いたが、どうやら他にはチョコケーキ、チーズケーキ、モンブランがあったらしいしな。チョコケーキはともかくとして、他のどちらかを残しておこうという気遣いは無かったのか?それに……」
放っておけばいくらでも続きそうな小言に溜息を吐く。そんなに文句があるなら、ケーキを食べるその手を止めればいいだろうに。嫌なら無理をせずに、誰かにショートケーキを譲渡すれば全てが解決するはずだ。
四つの中から真っ先にチーズケーキ(甘さ控えめ)を選んだ刹那は、そう思う。
というか、あのイライラっぷりは何だろう。絶対にカルシウム不足だ。今度、健康食品のカルシウム摂取品をプレゼントしてやろうか。刺々しい雰囲気も消えるし、イヤガラセも実行できる。経費がこちら持ち、というのは少々デメリットだが…それを補ってあまりある結果が出るに違いない。
そう思いながら、アレルヤが淹れてくれた紅茶を飲む。美味しかった。
…ちなみに、彼は刹那の次にチョコケーキ(甘そうだった)を選んだ。
……ということはつまりこの状況は、三人の中では一番最後にモンブラン(これも甘さは控えめだろう)を選んだ、あのロリコンのせいだと言えるのではないだろうか。あの場面でモンブランを選んだ彼。空気というか危機を感じ取れ。
そのことをティエリアに指摘しようとしたら、ガシッと肩を掴まれた。
何事かと見れば、全ての原因(確定)である彼が、訴えかける視線をこちらに向けていた。刹那の次の行動を予測したらしい。もしも実行すれば、冷たい言葉の雨が彼の上へと降り注ぐことになる。それを恐れての行動だろう。
だが、彼の言うことを聞いてやる義理はない。冷たく手を払った。
ロックオンの顔が絶望に染まった気がしたが、これも敢えて無視。たまには痛い目に遭ってもらおう。いつも遭わせている気もするが……認めたら負けな気がするので、いつもは違うと思いこむことにしよう。
などと思い、いい加減に視線が鬱陶しいので肘打ちをして彼を気絶させている間に、アレルヤが口を開いた。若干……苦笑を浮かべて。
「ティエリア、ケーキはお気に召さなかった?」
「あぁ。甘すぎる。もう少し砂糖を減らすことは出来なかったのか?…というか、誰が一体こんな物を買ってきたんだ。まぁ……予想は付くが」
「ふふっ……だから食べきったんでしょう?」
「毎回、色々な目に遭わせているからな。たまには……付き合っても悪くないかと思った。それだけのことだ。それよりも、」
「何?」
「アレルヤ・ハプティズム、ミッションだ。ほどほどの甘さのケーキを作れ。俺が気にいる程度の甘さのケーキだ」
それは……ミッションなのだろうか。どこからどう見てもソレではなく、あくまで私用というか個人的…いや、どっちも意味は同じか。とにかく、ミッションと形容するには相応しくない内容だ。
ツッコミを入れるべきかと悩んだが、止めた。
アレルヤの性格上、断ることは無いだろう。ということは、彼はケーキを作る。そのケーキがティエリアの元だけに行くとは考えにくいので、したがって刹那たちも彼の手作りケーキにありつける可能性が高いのだ。
「ねぇ、それで僕が『嫌』って言ったらどうするの?」
クスリと、微笑みを浮かべながら答える彼。当然ながらこれは冗談だろう。付き合いが長い分、表情で分かる。
「生憎だが、君に拒否権はない」
「だと思ったよ……君のことだから、ね」
「せいぜい頑張ると良い。あぁ…試作品が出来たら呼べ。俺が食べないと合格点かどうかが分からないからな」
……つまるところ、ティエリアはアレルヤの手作りケーキが食べたいだけ、なのではないだろうか。言っていることは正しいが、試作品が甘かったら本末転倒。それが分からない彼ではないだろう。
そしてお決まりといえばお決まりであるが、それにキュリオスのマイスターは気がついていない様子で、未だに微笑みを浮かべている。
ならば、と刹那は紅茶のポットを手に取った。
目標を駆逐するために。
目標を駆逐=ポットをティエリアに投げつける。
これはその……つい前日、お友達と会話した事柄が含まれているというか。
ケーキ買ってきたのは、当然ロク兄。この話の中ではとてつもなく扱いの悪いお兄ちゃん……ごめんね。
チーズケーキとモンブランは甘さ控えめ、チョコケーキとショートケーキは甘い、という設定。
というか、この話書いてたらチーズケーキが食べたくなった…。