[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
いい加減『CB』のカテゴリーが必要かも知れない。
拍手再録です。
08.2アウト満塁
「待てッ!」
「待てと言われて待ったりはしないんだよ……」
凄まじい形相で駆けてくるティエリアから逃げるのは、オレンジのハロを抱えて僅かに笑みを浮かべて走っているフェルトだった。
「だって、そういうことするのは馬鹿のすることだって…」
「誰だ!?誰がそんな面倒なことを君に伝えた!?」
「本。ロックオンが貸してくれた娯楽小説の中のキャラクターが…」
「何!?……あのロリコン・ストラトスが……ッ」
普通に話しているから忘れがちだが、二人は走っている。ついでに言うと追跡者と逃亡者である……が、ティエリアの恨みの方向はロックオンの方へと向いてしまったようだ。元凶を、という考え方は何となく分かるのだが。
少し楽しい気分になりながら、フェルトはさっと辺りを目を走らせる。
助けてくれる人はいない。ティエリアに捕まった瞬間にアウトで、ゲームは終了してしまうことだろう。
けれど……逃げ切れれば、ティエリアに大打撃が与えられる。
別にそれが目的ではないが、まぁ、逃げ切らなければミッションクリアともいえないので、彼には悪いがこのまま計画を遂行させてもらう。
「もう止まらなくていいからそのオレンジボールをよこせ!」
「嫌。データが消されちゃう……から」
なのに渡してしまったら困る。本当に困るのだ。
捕まったらアウトで、逃げ切ったらセーフ。捕まればゲームセットで、逃げ切れば逆転あるいは点差をさらに。
だから走る。逃げるため。
そして、ついに目的の場所……否、目的の人の元に。
「あら、フェルト。早かったわね」
「スメラギさん、ハロにデータは入ってます…」
「ありがとう、フェルト。にしても貴方が乗ってくれるなんてねぇ」
「……たまにはハメを外してみようかなって…」
どうだった……?と訊けば、戦況予報士は微笑んで頭を撫でてくれた。
目の端で苦虫を潰したような顔をするティエリアに、自分も元凶の一人でありながらも同情する。誰だって見られたくないに違いない。
眠っているときの顔、なんて。
(2008/10/05)