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本編沿い、始めました。
今回は第一話『天使再臨』より。
保護された沙慈と、刹那とティエリアの話。
01.白雪姫 (第一話:天使再臨 沙慈)
「沙慈」
「……刹那、今、僕は君と話したくない」
ふい、と視線を背ければ刹那は、微かに困ったような顔をした。
普通の人間みたいに、一般人みたいに。
…一般人なんて…そんなことないくせに。
ルイスを、姉さんを……僕から奪った君が。
それなのに、普通に生きていたんだね。
……姉さんは死んだんだよ?
「刹那・F・セイエイ、今の彼に何を言っても無駄だろう」
「……それもそうか」
ドアの辺りで壁にもたれ掛かっていた紫の髪の人(たしか……ティエリアとかいう名前だったはず)に頷いて見せ、刹那はゆっくりと自分から離れて行く。
その後ろ姿に、思わず沙慈は言葉を投げつけていた。
「どうして、」
「……」
「どうしてあの時…僕が銃口を向けた時、何も言わなかったの?」
一言でも言えば良かったのに。
ジッと彼を見ていると、ポツリと、刹那は呟くように、答えた。
「俺に、何と言えと言うんだ……?」
「分からない。けれど、何か言えば良かったんだ」
「……それは、謝罪を求めているのか?」
言われて、返答に窮する。
もしも謝られたとして、そして……自分はどうしたのだろう?…許さないだろうが、そしてその後、何がどうなるというのだろうか?
逆に間違っていないと言われたら……その時は…。
けれど、一言謝っていれば印象も変わったかもしれないのだ。
だから、沙慈は頷いた。
「…かもしれない」
「そうか……」
そこで刹那は、つい、と振り返った
その時に見えた彼の顔には……苦悩があった様で。
けれどそれは一瞬で消え、気付いたときには無表情の面が現れていた。
「ならば、俺はお前の求める返答を与えることが出来ない」
「何で!」
「……謝るというのは、過ちを認めると言うことだ。そして俺は……決して間違ったことをしなかったとは、言えない」
こう前置いて、刹那は言葉を続けた。
「だが、謝ること……それはつまり過去の否定…過去の経験、出会い、全ての否定だ…それを、俺は良しとしない」
「……そんなこと、僕は知らない」
「沙慈・クロスロード!」
ティエリアが咎めるように名を呼んだが、そんなものは気にならなかった。
そのまま、激情のままに叫ぶ。
「人からたくさん奪っておいて、そんなことを言えるわけ無いじゃないか!僕からたくさん奪っていて、なのに君は何も手放さないというの!?」
「……あぁ、そうかもしれないな」
返ってきたのは静かな言葉。
部屋の外へと出た彼の後ろ姿を見て、苦々しく表情を歪める。
そうして、呪詛のように言葉を吐き捨てた。
「最悪だよ、君は」
「……」
今度は彼は答えなかった。
刹那に続いて部屋から出たティエリアがドアを閉める操作を行うのを眺める。
…これからどうなるのだろう?帰ることが、戻ることが出来るのだろうか?その時……隣に、ルイスの姿は…あるのだろうか?
外から零れる光が細まっていくのを見ながら、思う。
…そんな中、再び振り返った刹那の表情。
それは、どこか疲れたような笑みだった。
「大丈夫だ、沙慈・クロスロード…お前は、大丈夫だ…きっと戻れる…俺たちと、違って」
そして彼が言った言葉。
思わず顔を上げてその言葉の意味を問おうとした時には。
扉は、閉まっていた。
大丈夫、貴方は毒リンゴを食べた白雪姫のようなもの
いつか必ず、平和な世界で目を覚ますことでしょう
けれど、毒リンゴを食べさせてしまった魔女は
二度と、日の下に返ることは出来ないのです
たとえそれが別の魔女の仕業であろうと
関係なく、全ての魔女が罰を受ける
だから魔女が消えるその日まで
貴方はどうか安全な場所で
眠っていてください
おやすみなさい
さようなら
謝るというのは、非があったと認めることです。
それはつまり、間違っていたと認めることであり、過去の行いを間違っていたと認識すること。
もしも『CBとしての活動』について謝る、つまりその行動を否定してしまったら、とか。
そうしたらきっと、ロックオンにクリスティナ、リヒテンダール、さらにはモレノさんとの過去も否定してしまうんじゃないのかなぁ、と。
書いている途中に思いました。
沙慈にはどのガンダムも『ガンダム』としか見えていないです。
刹那はそれが違うと分かっていますが、大切な物を失った彼に対しては何を言ってもきっと…『加害者』である自分が言っても、意味をなさないだろうと、そう思って居るんじゃないかな、とか。
だから言い訳なんてしないで、黙っていたんじゃないかな。
…何だか難しいです。
けど、分かり合う日が来たらいいな…て思います。