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「何で俺がコイツと一緒になんねぇといけねーんだ!?」
「ビリー・カタギリ、納得できるように零文字で説明願いたい」
「零って……説明させる気ナシ!?」
宿のフロアでの騒動が幕を開けて早、数分が経過している。
全く進行しない話し合いに、ソーマは一人、溜息を吐いていた。
沙慈とルイスの二人組は、結構簡単に決まった。二人で一緒に二人部屋へどうぞ、という形になったのは当然の成り行きだろうし。
ただ、問題は自分を含めたそのほかの十一人だった。
トリニティは三人固まってかと思ったら、ネーナが「刹那と一緒がいいなっ」なんて言い出すものだから、グラハムまでもが「ならば少年、私も供としてついていこう!」と調子に乗ったりして。二人に引っ付かれている刹那は「誰が貴様らと一緒に寝るかッ!」と叫んでいたのだが……今では気力もすっかり吸い取られたらしい。かなり疲れた顔だ。
全く離れようとしない二人に根負けして、結局、この三人は一緒に三人部屋にぶち込むこととなった。だから意思表明としての抱きつきは必要無くなったのだが、なおも引っ付き続けている二人は心の底から刹那が大好きなのだろう。…本人からすると、良い迷惑なのだろうが。
そしてその後、保護者三人(ロックオン、ヨハン、カタギリ)が「じゃあ一緒に」とか言って、結果、三人部屋が全部埋まってしまった。
ここで物申すことも出来ただろう……が……「夜通し語り合おう」とかいう言葉が聞こえてきたら、何だか保護者たちを引き離す事に躊躇いを覚えてしまった。いつも苦労しているからなぁと、納得さえしてしまった。
そうなると反論は…出来ない。
とまぁ、このような流れによってアレルヤ、ハレルヤ、ティエリア、ミハエル、そして自分ことソーマが残ってしまったわけ、なのだが。
このメンバーで、どうやったら平和的に解決できるというのだろう?
そこは分かったらしい。けれど、あーしろこーしろという指示を出せば、下手すると死傷者が出る恐れがある(主に指示を出した誰かに)。そのためにカタギリが例を挙げて……冒頭に至るわけである。
「全く……少しは譲ろうとか思わないんですか?大人げないです」
「そういうテメェこそ譲れ」
「遠慮します。というか、今現在の状況ならば私が一番適任ですが」
何に、というのは残りの五人メンバーのうちの一人を見れば分かる。
…つまり、誰がアレルヤと相部屋になるかと言うこと。
「てーかよ、お前らじゃアレルヤが危なくねぇ?」
「黙れ馬鹿面。貴様が最も危ないことを理解しているのか?どうせ貴様の理性などかなり緩いだろうに。絶対本能の方が強いだろう?」
「テメェ……刻まれてぇのか?」
「出来るものならやるがいい。所詮、返り討ちだろうがな」
火花を散らすティエリアとミハエル。
それを見ながら、あぁやっぱりこの二人は馬が合わないんだなと、しみじみと思っていると、隣で黒い服を身に纏っている元男性の現在女性(本人はかなり不本意な結果である)が微かに震えていた。
何……?と思った、次の瞬間。
軽く俯いていたアレルヤが勢いよく顔を上げ、ケンカをしていた二人をキッと睨んだ。
「もういい!僕とソーマちゃんとで一つのベッド使って、もう一つはハレルヤで、僕ら三人で寝るからいいっ!だからいい加減に止まって!近隣の皆さんに迷惑だよ!」
「なっ……」
ソーマはショックを受けた様子の両名を振り返ることなく歩き出した彼の後ろを付いていきながら、固まってしまった二人をチラリと見る。
それからもう一人の部屋の同居人を見やり、さて、どうやって追い出そうかと画策を開始した。