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橙のお題は久しいな…ていうか、二期始まってるのに一期の…。
二期の話も書きたいけれど、まだまだ情報が少ないんですよね。
二期のティエリアの一人称って何ですか?
09.ゆらゆら
ソレを初めて見たときに覚えた感情は、驚きだった。
何故なら、こんな光景など想像も付かなかったから。
自分と同じように目を丸くして、食い入るようにソレを見つめていた方割れが、ポツリ、と呟いた。
「……凄い…」
自分たちの視線の先、浮かんでいたのは透明な球体の膜。
幾つも幾つも宙に浮かんでいるソレは、どうやら『シャボン玉』というらしい。さっき通りかかった誰かがそう言っていた。
片割れと共にソレを見上げ、太陽を反射して光るソレを見る。
確かに、凄い……かもしれない。機関にいる間は見たことがないから、これが本当に『凄い』とカテゴリーされる物なのかは判断が付かない。けれど、これは一般的に普及しているのだろうと周りの様子から推測は出来る。
ということはアレだ。この驚きは今回限りということだ。
一般的に出回っている代物なら、これからいくらでも見る機会はあるだろうし、もっと特別な物だってどこかには有るだろうから。
ならば、今回限りの感情を味わっておこうかと改めて見直していると、ふいに、一つのシャボン玉がこちらに寄ってきた。
風に吹かれてユラユラと揺れるソレ。
あぁ、動きも全て風次第なのかと思いながら眺めていると、何となくだろう、方アレはゆっくりとソレに向かって手を伸ばした。
そろり、と伸ばされた指先はシャボン玉に触れ、しかしその瞬間に破裂してしまう。
「……壊れちゃったね」
『脆いんだな』
あまりに呆気ないソレの最後に些か拍子抜けしながら、何かに似ているような気がして首をかしげる。
何に似ているのだろう?
そう考えて、直ぐに分かった。
『こんだけ壊れ易いって、まるで人間だよな』
「え?」
『人間なんてそんなもんだろ?簡単に殺せる。……ま、コイツらを見たときみてぇな感情なんて、似てても全然覚えねぇけど。いっそシャボン玉みてぇに潔く散れば、少しはキレイとでも思えるんじゃねぇの?今思うのは不可能だけどな。あんな汚らわしい種族がキレイなんざ……虫ずが走るっての』
「ハレルヤ……」
と、片割れは悲しげに笑った。
「そんな悲しいこと、言わないでよ」
けれど、片割れは決して。
決して『そんなことはない』とは言わなかった。
「懐かしいよね、シャボン玉」
『ん?あぁ、そういや久々に見るよな』
何をするでもなく公園のベンチに座って、ボンヤリとしていると視界に入った幾つもの透明な球体……シャボン玉。
やはり、最初のような思いは抱かない。
だが間違いなく人間よりはキレイな物なのだろうというのは、未だに変わらない考えだ。
人間なんて誰も彼もが罪人だ。人を殺した自分たちも、人を見殺しにした他人も、人が殺されているのを知らない誰かも、人を人とも思わず実験を繰り返したアイツらも、人がそんな目にあっていると知りながらも無視した何者かも。
だから、そんな罪を一つも持たないアレの方がキレイ、なのだろう。
『アレルヤ、』
「何?ハレルヤ」
『人間って馬鹿だよな。自分たちの汚れをより鮮明に見せる物を自分たちで作るなんてよ。そのうち、自分たちの作った自分たちよりもキレイな物に埋もれて窒息するんじゃねぇ?ま、それが一番お似合いの末路か?自分で自分を殺す。人間らしい終わりだな』
つまり、人間は愚かだと言ったわけだが。
そこを正確に理解したのだろう。
片割れは悲しげに微笑んだ。
「そんな悲しいこと、言わないでよ」
けれど、片割れは決して。
今回も決して。
決して『そんなことはない』とは言わなかった。
…ちょっとシリアス風味?
こういう会話もアリかなぁとか。