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途美学園設定です。
そしてジョシュアにお疲れ様。
09.80円切手
それは移動教室の際のこと。
移動している最中で、妙な人だかりを見つけたジョシュアは足を止めた。
「何だ……?」
あの教室は、これから自分たちのクラスが使うはずの教室で、だから人がいたとしてもそれは教室から出る生徒の波であるハズで……決して、人だかりが出来る道理はない。
首を傾げながら人混みをかき分け、見えた光景に愕然とする。
そこには。
「見ろ少年!私は既に五十枚を超した!これが私の愛の力だ!」
「くっ……だが、俺の方が字が小さい!よって俺の方がより多くの文字を書いている!」
「なんと!?」
……うん。
「教室間違えたかな……」
そうそう、場所を間違えたに違いない。でなければクラスどころか学年まで違う刹那と、英語の教師でも無いグラハムがいるわけがないのだ。
「だっ…だが、私の方が便箋が大きいぞ!」
「何!?」
…まぁ、そうであろうとなかろうと。
「お前らはどうして教室で手紙を書いてんだーッ!」
叫びながら、ジョシュアはズンズンと、教室の中央で手紙を書き続けていた刹那とグラハムの方へと向かった。これはダメだ。放っておいたらキリがない。というか、さっき確認したら教室は間違ってなかったので、いい加減に出て行ってもらわないと自分たちが困るというのが正直なところ。
「ジョシュアか…一体どうしたんだ?」
「ここで授業があるんだよ!だから出てけ!」
「なんだと!?…ならば仕方あるまい……少年、手紙を持って教室の端へと移動するぞ」
「了解した」
「人の話を聞いてたか!?俺は出てけって言ったんだけどな!?」
「細かいところまで気にすることもあるまい。ガンダムへの愛の前には、全てのことが些細に思えてくるぞ?例えば……二、三時間目に入っていた授業のことなど」
「お前、前とその前の授業サボったのか!?てことは刹那、お前も!?」
「当然だ。ガンダムのためだからな」
「どこがとうぜ……ガンダム?」
その言葉に一旦叫ぶのを止め、直ぐ傍にあったチラシを手に取る。
「なになに…『ガンダムへの愛を贈るキャンペーン』……?」
「入賞すれば限定ガンプラが届く。エクシアのロールアウトカラーだ」
「何より、我々の思いの丈をガンダムに伝える良い機会ではないか!」
「伝わるのはガンダムじゃなくてキャンペーンの人たちにだけどなー…」
そこら辺、分かって……いないか。
止まらないなら寮に戻ってしまえと思いつつ、喋りながらも手の止まることのなかった二人を見……あ、無理だ、と諦めた。先ほど『端に移る』と言っていたけれど……あれも実行できたか怪しい。それほどまでに、教室の中央という場所に落ち着いていた。
これは、両者が手紙を思う存分に書いてからでないと…動かない。そんな感じだ。
いつの間にかクラスのメンバーに入れ替わっていた(ただし自分のようにここへ移動に来る生徒のみ)人だかりにチラリと、諦めて廊下で自習でもしておけ、と視線で伝える。
何人か分かってくれたのか、周りの人間をつついてしゃがみ込むクラスメイトを見ていると、再び、グラハムの叫び声が聞こえてきた。
「しまった!」
「今度は何だ…」
「切手が足りないぞ!?」
どうやら書き終えたようだが……肝心の切手が無かったらしい。
それは何と言うべきか…と冷めた目で見ていると、くるんとグラハムと刹那、両方の顔がジョシュアの方を向いた。
思わずたじろぐ。
「な…何だよ……」
「ジョシュア、80円切手を買ってきてくれ!」
「はぁ!?」
「買ってきてくれたら、私のガンプラコレクションの中から一人を譲渡しよう!」
「いらねーよッ!」
「なんと!?つまり報酬無しで買いに行ってくれるというのか!?」
「違っ……」
「そうなのか…すまないな、ジョシュア」
「買ってくるのは十枚程度でいいぞ、ジョシュア」
「……もういい」
手に持っていた荷物を置いて、ジョシュアは教室から出て行くことにした。
カタギリにでも言えば、どこからか入手してきてくれるだろう。
(それは災難だったねぇ…でも十枚も切手って要るのかな?)
(さぁ…そこまでは確認するのも億劫だしな…)
ジョシュアが苦労人…。