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13. 古の功績を頼りにして
「お前……残ったのか」
「あぁ。いけなかったか?」
「いや……マリーの知り合いだからな、敵対してくれないのならありがたいが…」
目を丸くしていたソーマに尋ねると、彼女は慌てた様子で言葉を続けた。見たところ彼女は……マリーの少なくとも親類だろうから、やはりそんな彼女の知り合いとは一人でも多く戦いを回避したいのだろう。
まるっきりハレルヤとは違う反応に苦笑しつつ、刹那はソーマが持っている本に目を向けた。
……あの後、刹那はハレルヤによってリビング(らしい)場所に連れてこられた。あの青年……アレルヤと言うらしい……が寝ているあの場所には、出来ればあまり人を立ち入らせたくはないそうで、そこはハッキリと彼の気持ちが分かった。確かに、あまり見られたくもないだろう。大切だと……ポツリと漏らしていたし。
そして、そこで神殿から持ってきたという本を読んでいるソーマに出くわしたのだった。
「……人間は、やはり滅ぼすのか」
「あぁ…そうだな。アレルヤが喜ぶとは到底思えないが、そうでもしないと私たちの気が収まらない。彼をあんな風にしてしまったヤツらなど……っ」
「…悪いな」
「いや、お前が悪いんじゃないのは分かっている。……出来れば気にするな」
「そうか」
ならば気にしないことにして、ヒョイと彼女の手元から本を取る。
これは予想外の行動だったのだろうか……呆けた顔をしているハレルヤとソーマに一瞥をやって、刹那は近場にあった椅子を引いて腰掛けた。こうした方が読みやすい。
ペラリとページを一枚捲ったところでようやく我に返ったのか、ハレルヤがさっと刹那の手から本を奪い返そうとした。
それを軽く本を持ち上げることで回避し、刹那は読み続ける。
「……何のつもりだテメェ」
「大したことじゃない。気になっただけだ。読んだら返す」
「…そう言う問題なのか?」
「……この本は」
もう一枚、ペラリ、と。
次は何かの儀式の話だった。
「…多くの術や技術を記してあるようだな」
「ん?まぁ、昔のヤツらが後世のヤツらに自分らの知恵でも何でも、伝えてやろうって考えて作ったらしいしな。無かったらむしろ変じゃね?」
「その通りだな。そのような本だからこそ、人間の滅ぼし方も書いてあるハズだ」
ハレルヤとソーマの言葉を聞いて、刹那は少し溜息を吐いた。
……昔の偉人たちは、どうしてそんな危険な知識を後世に。悪用されるとは思わなかったのか、とにかく知識を残したかったのか……どっちも嫌だった。
だが、だからこそ。
「…もしかしたら、アレルヤの『鍵』化の現象を止め、戻す術もあるかもしれない」
「有り得ねぇだろ……ンなの。聞いたことねぇし」
「分からない。…全部読んだのか?」
「いや……まだだが」
ソーマが首を横に振ったのを確認して、刹那は本のページを捲り続ける。
そして。
「……あった」
「何!?」
「おいテメェ、嘘とか言ったら消し炭にすんぞ?」
「本当だ…が」
それには続きがあるのだ。
「それには、多くの人間を生贄にささげなければならないらしい」
「へぇ……一石二鳥じゃねぇか」
「だな」
頷きあっている以人たちを見て、小さく溜息を吐く。
自分の責任も多少入ったことになるが……これで確実に、人間は滅ぶ。
ただ、普通に滅ぼされるよりは有意義な理由で滅ぼされる。それだけだ。